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ワクチンが起こした奇跡 予防接種拡大計画
感染症と闘った人々の記録
原書: The Planned Miracle
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年12月10日
- 書店発売日
- 2021年12月2日
- 登録日
- 2021年11月1日
- 最終更新日
- 2021年12月14日
紹介
WHO、ユニセフを主体としたEPI(予防接種拡大計画)は、はしか、ポリオ、百日咳、ジフテリア、破傷風といった感染力・子どもの罹患率・死亡率の高い感染症を予防接種によって世界規模で制圧するプロジェクトである。その歴史を詳細に追った記録。
目次
はしがき
用語解説[四本健二]
第一部
序章 カメラとクレジット・カードを携えて
目映いサリーの真相
第一章 なぜ子どもは死んでしまうのか:公衆衛生学的考察
見過ごされてきた子どもの病気
子どもの成育と感染症
第二章 恒久的解決策:ワクチンの効用
二〇〇年の空白
ワクチン・ビジネスと予防接種キャンペーン
第三章 静けさの前の嵐:WHOとユニセフの確執
WHOのプライマリー・ヘルス・ケア戦略
二人の事務局長
WHOとユニセフは歩み寄ることができるか
第四章 奇跡の産声:EPIの青写真
機は熟した
ウィリアム・フォージとタスク・フォース
コールド・チェーン
第五章 もう後戻りはできない:EPIの躍進
もう後戻りはできない
第二部
第六章 奇跡のモデル:トルコでの成功
EPIの試金石
準備万端
アブラハムの奮闘
EPIのために社会を動かす
大規模接種の幕開け
待ちに待った知らせ
トルコの教訓
第七章 弾丸を撃つか、予防接種を打つか?:レバノン内戦下のEPI
隠密行動
内戦下のEPI
平和の礎
第八章 マセイオーの伏兵:ブラジルでのポリオ根絶
ポリオ・ウイルスの反撃
生ワクチンと不活化ワクチン
なぜ、ポリオは再燃したのか
貧困層とEPI
中南米諸国がポリオを根絶
第九章 国連機関とNGO:セーブ・ザ・チルドレン・ファンドの苦悩
国際協力に跳び込んだ若き医師
治安情勢に揺れるEPI
援助調整という課題
第一〇章 最高の贈り物:二一世紀に向けて
貧困に抗って
EPIがもたらしたもの
第三部
第一一章 “未来への約束”と“バナナの皮”:EPIは成功したのか
EPIの波及効果
乳幼児死亡率と人口問題
ポリオの根絶に向けて
第一二章 想定外の脅威:エイズの出現
HIVの感染経路とエイズの拡がり
HIVの感染経路の多様化:母子感染
エイズとの長期戦
終章 結びにかえて
補論 奇跡の法則[久木田純]
訳者あとがき[四本健二]
前書きなど
はしがき
(…前略…)
この本は三部構成になっている。第一部では、EPIの背景と先進工業国で製造されるワクチンを発展途上国の子どもたちに届けることを可能にするために何をしなければならなかったか、そしていまだに何をする必要があるのかを明らかにする。
発展途上諸国のうち一〇〇か国以上がEPIに参加していた。筆者は、それらすべてを訪問できたわけではないが、読者の皆さんも一回の麻疹の予防接種を目にすることは、すべての麻疹の予防接種を目にすることに等しいだろうと思う。しかし、子どもたちの経験には大きな違いがある。EPIに参加した国ぐにが歩んだ道のりを語る第二部では、筆者が取材した人びとと場所、EPIの特筆すべき側面にかかわった国ぐにを選んだ。大国のトルコは、社会全体を動かして三か月間にわたる予防接種の集中的キャンペーンを展開するというUNICEF(国連児童基金)のアプローチの典型的な事例である。レバノンの場合は、読者の見方によって大いなる負け戦か、あるいは堂々たる英雄的勝利と映るかもしれないが、武装闘争を戦う各派が一時的な停戦の説得に応じたおかげで、子どもたちに予防接種を受けさせることができた。ポリオを根絶しようというブラジルの努力は、まさに成功の瀬戸際にまで迫ったにもかかわらず、思わぬ伏兵の出現にしてやられた。ウガンダでは、子どもを守る好機は、同時に内戦の色合いの濃かった国民を再統一する好機ともなるはずだったが、エイズを蔓延させた土壌は、それぞれ異なるアプローチを採った関係機関を疲弊させた。
第三部ではEPIの対象ではなく、現在は開発されていないマラリアのワクチンが、私たちの感染症予防法に加えられ(WHOによれば、二〇二一年一〇月からアフリカでマラリアのワクチン接種が開始された:訳者注)、ポリオもおそらくは麻疹も根絶されているかもしれず、政治的決断のおかげですべての子どもの命が、適切な医療体制によって守られているかもしれない未来と二一世紀の到来までに何が期待できるかを論じる。
上記内容は本書刊行時のものです。