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生活保護審査請求の現状と課題 吉永 純(著) - 明石書店
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生活保護審査請求の現状と課題 (セイカツホゴシンサセイキュウノゲンジョウトカダイ) 簡易・迅速・公平な解決をめざして (カンイジンソクコウヘイナカイケツヲメザシテ)

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発行:明石書店
A5判
304ページ
上製
価格 4,500 円+税   4,950 円(税込)
ISBN
978-4-7503-5135-3   COPY
ISBN 13
9784750351353   COPY
ISBN 10h
4-7503-5135-0   COPY
ISBN 10
4750351350   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年12月30日
書店発売日
登録日
2020年11月27日
最終更新日
2020年12月25日
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紹介

生活保護制度では、権利侵害に対する裁判の前に都道府県知事に審査請求を行う必要があり、そこで出た裁決を調べることで行政運用の実態検証が可能になる。本書は2006年度以降約400件の裁決の分析を踏まえ、あるべき生活保護運用についての提案を行う。

目次

 まえがき
 凡例

第1部 生活保護審査請求制度の現状と課題

第1章 生活保護審査請求の現状と課題
 第1節 生活保護審査請求の制度的意義
 第2節 審査請求制度の現状

第2章 改正行政不服審査法施行後の生活保護審査請求と裁決
 第1節 改正行政不服審査法の概要
 第2節 生活保護における行政不服審査会等の状況(その1)-行政不服審査会の答申状況(生活保護)
 第3節 生活保護における行政不服審査会等の状況(その2)-行政不服審査会答申等の事例検討
 第4節 小括

第2部 主要争点別の行政運用、判例、裁決の状況

第3章 保護の申請
 第1節 問題の所在
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

第4章 自動車
 第1節 問題の所在
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

第5章 稼働能力
 第1節 問題の所在
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

第6章 扶養
 第1節 問題の所在
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

第7章 世帯単位
 第1節 問題の所在
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

第8章 指導指示
 第1節 問題の所在
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

第9章 費用返還(法63条)
 第1節 問題の所在と論点
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

第10章 不正受給(法78条)
 第1節 問題の所在
 第2節 行政運用
 第3節 判例
 第4節 裁決
 第5節 争訟例を踏まえたあるべき行政運用

 あとがき
 初出一覧
 判例索引

前書きなど

まえがき

 生活保護は権利といわれる。権利が侵害された場合の最終的な権利の実現は裁判によって保障される。しかし、生活保護では、直ちに裁判に訴えることはできず、原則として、裁判の前に都道府県知事に審査請求をしなければならない(審査請求前置主義)。その趣旨は、裁判は費用や時間がかかることから、簡易、迅速、かつ専門性ある判断が裁判の前になされる方が権利実現のためには有益であり、訴訟経済上も効率的であるところにある。このことは、最後のセーフティネットである生活保護においては特に当てはまる。生活保護利用者にとって、生存権の侵害は迅速に救済されなければならず、裁判費用の捻出は困難であるからだ。
 このような審査請求制度について、本書は二つの狙いの元に執筆した。
 一つは、審査請求制度の一般法である行政不服審査法が、公平な審理の向上を主な目的として2014年に抜本的に改正され2016年度から施行されたが、施行後4年が経過した現在において、その目的が生活保護の領域で達せられているのかの検証を行うためである(第1部)。結論を先に述べれば、改正によって設置された行政不服審査会の認容答申によって、新たに約10%程度の認容裁決が生まれている。行政庁の通達には拘束されずに、法令に従って審査が行われる審査会の役割は一定程度は実現されているといえるが、今後更にその機能を発揮させるには、現時点での実施状況や答申の内容を分析することが必要である。
 二つは、都道府県知事が出した裁決を分析することにより、行政運用の実態を検証するためである(第2部)。筆者は、2017年4月にネット上に「生活保護裁決データベース」(http://seihodb.jp/)をリリースした(JSPS科研費、基盤(C)「生活保護行政標準化のための審査請求裁決書の分析と提案」研究課題番号26380085)。このデータベースは、2006年度から2015年度に全国の都道府県知事が出した裁決を情報公開請求により約6,500件収集し、注目すべき裁決約500件を論点別に抽出し、裁決書をダウンロードできるようにしたものである。生活保護裁決についての初の本格的なデータベースである(2019年にその後の裁決約100件を追加)。幸い、リリース後、5,000人を超える利用があったが、裁決の内容や傾向を分析する課題が残されていた。本書では、アップされている約600件の裁決中、生活保護で主に争点となる8つの領域における延べ約400件の裁決の分析を試みた。分析に際しては、各領域における行政運用、判例を検討の上、裁決を分析した。生活保護法は1950年に施行されて70年が経過したが、法の基本的な枠組みは変わっておらず条文も多くない。生活保護行政を規定するものは、70年の間に蓄積された膨大な行政通知である。生活保護行政の分析に当っては、行政通知と通知に基づく運用が、法的にあるいは行政庁である審査庁によってどのように評価されているかを踏まえて検証することが不可欠である。このような検証を踏まえて、各章末にあるべき行政運用についての提案を行った。
 本書が、生活保護の当事者や、ケースワーカー、法律家、また貧困や福祉、生活保護の研究者や福祉関係者の日々の仕事や研究の糧になればこれに勝る喜びはない。また、本書は筆者の未熟さから、思わぬ誤解に基づく記述などがあると思う。忌憚のない御意見と御叱正を賜りたいと思う。

著者プロフィール

吉永 純  (ヨシナガ アツシ)  (

花園大学社会福祉学部教授(公的扶助論)、全国公的扶助研究会会長、日本社会保障法学会理事。1979年京都大学法学部卒業、2010年京都府立大学大学院博士後期課程修了、博士(福祉社会学)。1982年京都市役所に入り福祉事務所を中心に、生活保護ケースワーカー(12年半従事)をはじめ生活保護事務、生活保護監査、ホームレス支援などに携わる。2006年花園大学社会福祉学部助教授を経て2008年から現職。著書『生活保護の争点』(高菅出版、2011年)、『生活保護「改革」と生存権の保障』(明石書店、2015年)、編著に『Q&A生活保護手帳の読み方・使い方[第2版]』(同、2020年)、共編著に『無料低額診療事業のすべて』(クリエイツかもがわ、2019年)、『判例 生活保護』(山吹書店、2020年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。