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日本とフィンランドにおける子どものウェルビーイングへの多面的アプローチ
子どもの幸福を考える
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年1月
- 書店発売日
- 2017年1月30日
- 登録日
- 2017年1月20日
- 最終更新日
- 2017年1月20日
紹介
日本とフィンランドにおける子どもの心の健康について、小中学生を対象とした質問紙法および投影法による2国間比較研究。2国の現状と課題に関する論考および両国の社会的基盤、教育基盤などの比較資料を加え、両国の子どものメンタルヘルスに対して学術的かつ多面的なアプローチを試みる。
目次
はじめに
序章 フィンランドの概要と研究概要
第1節 フィンランドの概要
第2節 研究概要
第Ⅰ部 小中学生のウェルビーイング調査
第1章 質問紙を通してみたウェルビーイング
はじめに
第1節 日本の子どものQOL──フィンランドの子どもとの比較
第2節 友だち領域と学校領域のQOLに関する検討
まとめと今後の課題
第2章 イメージ連想法を通してみた自己イメージと学校イメージ
はじめに
第1節 方法
第2節 結果と考察
まとめと今後の課題
第3章 対人葛藤解決方略調査を通してみた葛藤解決のあり方
第1節 子どもの対人葛藤解決方略と学校生活
第2節 対人葛藤解決方略における文化差
第3節 方法
第4節 国、発達段階、性別による各方略使用の違い
まとめと今後の課題
第4章 文章完成法を通してみた自己像と対人関係
第1節 問題と目的
第2節 方法
第3節 結果
第4節 考察
まとめと今後の課題
第5章 動的学校画を通してみた学校生活
はじめに
第1節 印象、活動および自己像の2国間比較
第2節 友人関係および対教師関係の2国間比較
まとめと今後の課題
第Ⅱ部 社会の支援を必要とする子どものウェルビーイング
第6章 日本とフィンランドにおけるひきこもり傾向児
はじめに
第1節 日本のひきこもり傾向児
第2節 フィンランドのひきこもり傾向児
第3節 総合考察
まとめと今後の課題
第7章 日本とフィンランドにおける子どもの社会的養護
はじめに
第1節 社会的養護の背景について
第2節 児童福祉施設の実際
第3節 考察
まとめと今後の課題
第Ⅲ部 学校における心の支援
第8章 学校現場を支える学校カウンセリングの2国間比較
はじめに
第1節 歴史的背景
第2節 一次的援助サービス
第3節 二次的援助サービス
第4節 三次的援助サービス
第5節 心理アセスメント
第6節 資格と組織的基盤
第7節 専門家の養成
第8節 課題
第Ⅳ部 フィンランドにおける子どものウェルビーイング
第9章 フィンランドにおける子どもの幸福とその支援
はじめに
第1節 子どもと若者の育成に関する2015年フィンランド内閣計画
第2節 幸福と健康における政府の目標について
第3節 児童福祉法について
第4節 保健・医療法について
第5節 福祉事業の担い手と団体について
第6節 国立健康福祉研究所:統計と専門的助言について
第7節 セーブ・ザ・チルドレン・フィンランド:ケア事業はどのように行われているか
第8節 政府による開発計画:KASTEについて
第9節 子どものための福祉サービスの有効性:フィンランド地方自治体協会による研究プロジェクト
第10章 フィンランド在住の日本人心理学者からみた学校環境とウェルビーイング
はじめに
第1節 学校ウェルフェアチーム
第2節 いじめ
第3節 学習と学校生活についての支援
第4節 学校と保護者の連携
第5節 多言語、多文化教育
おわりに
資料 2国間比較統計
2国間調査研究成果一覧(平成22年~平成28年)
あとがき
前書きなど
あとがき
本書では、日本の子どものウェルビーイングについて、そして子どもの幸福について多面的に考えることができるよう構成した。「はじめに」でも触れたが、子どものウェルビーイングを考えるときに大切なことは、子ども自身が「幸せである、よりよく生きている」という感情や感覚をもっていることであろう。
現代は、国内外において社会情勢の不透明感や閉塞感が、事あるごとにマスコミなどで話題になることも多い。一方、そうした社会背景もあってであろうか「幸福度」という言葉に触れる機会もまた多いように思う。国内では、長寿、持ち家率、離職率や医療費などによる幸福県ランキングが話題になり、世界では実質GDP、汚職レベル、社会支援などによる国別幸福度ランキングが国連から発表され話題になっている。心理学領域に目を向ければポジティブ心理学が米国から日本にも輸入されて話題になっている。セリグマン(Seligman, M. E.)の提唱するポジティブ心理学は「人々を一層幸せにすることができる」ことを目指すものであるという(2011)。こうした現状は心理学に限らず、医療、社会基盤、福祉や生活基盤などさまざまな側面から「幸福であること」を世の中全体が意識し、目指しているようにも映る。
本書では、臨床心理学の分野から子どものウェルビーイングにアプローチを試みた結果と、子どものウェルビーイングを支える社会基盤や環境についての論文および資料を掲載した。「幸福」に関心が向けられる時代の中で、子どもを取り巻く大切な環境である私たち大人が、「子どもたちの幸せ」について、「自分自身の幸せ」と同じくらい真摯に向き合って考える機会が増えてくれれば、未来を担う子どもたちにとって、それはまた「幸せ」なできごとであるように思い、その思いも本書に託したつもりである。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。