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部落問題と近現代日本 松本治一郎の生涯
原書: The Buraku Issue and Modern Japan. The career of Matsumoto Jiichiro
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年11月
- 書店発売日
- 2016年11月22日
- 登録日
- 2016年11月4日
- 最終更新日
- 2016年11月4日
紹介
1920年代以降、水平社、部落解放同盟の指導者・国会議員として部落差別と闘い、第二次大戦後は「世界水平」をめざして国内外で活躍した松本治一郎の生涯を、イギリス人研究者が日本の近現代史の流れと重ね合わせて描く。
目次
謝辞
日本語版まえがき
刊行に寄せて
はじめに
第一章 少年・青年時代
一 博多の被差別民たち
二 封建身分制とその改革
三 子ども時代の松本治一郎
四 中国大陸へ
五 帰国
六 福岡の政治と部落関係団
七 博多毎日新聞差別記事事件
八 黒田事件
九 小括
第二章 松本治一郎と水平社
一 水平社の創立
二 九州の水平社
三 関東大震災発生―「錦旗革命」?
四 徳川公爵辞爵要求事件
五 水平社の再建
六 福岡連隊事件
七 岩尾家定の動向―こぼれ話
八 捜査と裁判
九 天皇直訴
一〇 小括
第三章 監獄から議会へ
一 一九三〇年代初頭の治一郎と政治
二 水平社解消の提案
三 治一郎の出獄と水平社の停滞
四 高松地裁判決糾弾運動と水平社の再生
五 水平社と財政と政治
六 一九三六年選挙
七 小括
第四章 松本治一郎の代議士時代の一九三六~四一年
一 政治的背景
二 治一郎の議会活動(一九三六~三七年)
三 水平社と戦争の勃発
四 一九三七年選挙と近衛文麿
五 水平社の時局順応
六 代議士・松本治一郎
七 水平社と戦時の融和運動
八 総力戦の開始と治一郎―小括
第五章 松本治一郎と太平洋戦争
一 総力戦開始時の治一郎
二 一九四二年選挙
三 戦時中
四 他の全国水平社幹部
五 小括
第六章 松本治一郎と占領下の日本
一 降伏後
二 治一郎と戦後憲法
三 戦後初期の解放運動
四 新憲法下の政治活動
五 天皇と「カニの横ばい」拒否事件
六 公職追放
七 部落解放運動の再生
八 福岡の運動
九 松本組
一〇 小括
第七章 一九五〇年代の松本治一郎
一 はじめに
二 治一郎の政界復帰
三 一九五三年選挙
四 反基地運動
五 三池争議と安保闘争
六 一九五〇年代前半の治一郎の国際的活動
七 ラングーンから北京へ
八 治一郎とジョセフィン・ベーカー
九 北京からストックホルムへ
一〇 治一郎とバンドン会議
一一 西欧と北アフリカ
一二 中国、オーストラリア、中国
一三 部落解放運動の戦略
一四 部落差別反対運動
一五 第一〇回大会(一九五五年八月二七日~二八日)
一六 治一郎と一九五〇年代の部落解放理論
一七 小括
第八章 松本治一郎の晩年―一九六〇年代
一 一九六〇年代の治一郎
二 炭鉱労働者と米軍基地
三 最後の訪中(一九六四年)
四 同和政策の動向
五 第二〇回大会と治一郎の最後の演説
六 病に倒れた治一郎、そして告別
七 治一郎亡き後
八 部落解放運動と同和政策
九 引き継がれる「松本精神」―展望
注
参考文献
訳者あとがき
索引
前書きなど
訳者あとがき
本書は、二〇一〇年に英国のラウトリッジ(Routledge)社から「日本研究叢書」の一環として出版された Ian Neary, The Buraku Issue and Modern Japan. The career of Matsumoto Jiichiro の全訳である。
著者のイアン・ニアリー氏は日本の近現代政治史を専門とする研究者で、ご自身の「謝辞」や森山沾一・公益社団法人福岡県人権研究所理事長の「刊行に寄せて」でも触れられているように、主に福岡を拠点として在外研究に従事していた時期もある。
当然のことながら日本語には堪能で、本書でも日本語による史料が縦横無尽に参照されているのは見てのとおりである。それに加えて、従来の松本治一郎伝ではあまり参照されることのなかった英語の史料も豊富に参照されており、とりわけ戦後の治一郎の国際的活動については、ジョゼフィン・ベーカーとの友情やオーストラリア・ニュージーランド訪問の様子など、新たに掘り起こされた事実が多数報告されている。
松本治一郎については、すでに部落解放同盟中央本部が『解放の父 松本治一郎』(部落解放同盟中央出版局、一九七三年)や『松本治一郎伝』(解放出版社、一九八六年)などを公にしており、また第三者的視点から書かれた代表的な伝記として高山文彦『水平記』(新潮社、二〇〇五年)などがある。本書でもこれらの先行文献はおおいに参照・引用されているが、本書は、これまで語られてきた治一郎像を国際的視点からあらためて見直すとともに、従来あまり語られてこなかった側面に光を当てるものとして、部落解放史研究に貴重な貢献をなすことになるだろう。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。