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アクティビティ実践とQOLの向上 日本福祉文化学会編集委員会(編) - 明石書店
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アクティビティ実践とQOLの向上 (アクティビティジッセントキューオーエルノコウジョウ)

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発行:明石書店
四六判
256ページ
並製
定価 2,200 円+税   2,420 円(税込)
ISBN
978-4-7503-3149-2   COPY
ISBN 13
9784750331492   COPY
ISBN 10h
4-7503-3149-X   COPY
ISBN 10
475033149X   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0336  
0:一般 3:全集・双書 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年3月
書店発売日
登録日
2010年4月13日
最終更新日
2019年12月12日
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紹介

高齢者や障害者、子どもたちなど、様々なニーズをもつ人を対象にした魅力的な文化活動が各地で行われている。一人ひとりの生活の質を向上させる福祉文化活動を行うために、どのような組織づくり、計画立案、評価が必要かを、豊富な実践事例から探る。

目次

 まえがき(編集代表:石田易司)

第1章 活動の計画と運営組織(石田易司)
 第1節 高齢者の生活実態
 第2節 高齢者の暮らし方
 第3節 願い事がないということ
 第4節 福祉現場ではなぜ難しいのか
 第5節 組織づくりの必要
 第6節 リーダーシップ
 第7節 どんな組織が必要か
 第8節 組織が新しいことに取り組める条件
 第9節 目的達成のために

第2章 QOLを高めるアクティビティ実践事例
 第1節 思いや理念を形にする
 ◆認知症高齢者専用棟におけるレクリエーション活動――個人を尊重してエンパワメント(滝口真)
  1 認知症高齢者と福祉レクリエーション
  2 認知症高齢者へのレクリエーション活動――事前評価と計画策定
  3 まとめ――認知症高齢者から学ぶ
 ◆引きこもり児童に対する作詞療法――信頼に応えるということ(松原徹)
  1 ヴォイストレーナーになったきっかけ
  2 ある不登校児との出会い
  3 レッスン開始
  4 作詞療法
  5 レッスン中止
  6 日記
  7 作詞療法の効果
  8 おわりに
 ◆児童養護施設における権利擁護実践――変化する理念を実践に生かす(鈴木力)
  1 はじめに――児童養護施設とは
  2 児童養護施設で生活する子どもの権利と人権擁護
  3 施設内での子どものケアをよりよいものとするために
 第2節 個を尊重する
 ◆施設における高齢者への音楽を用いたケア――私の音楽、あなたのメロディー(堀清和)
  1 高齢者と音楽療法
  2「高齢者」は弱者?
  3 ケアの目的は?
  4 どのような音楽を用いればいいか
  5 医療施設におけるケアの実践例
  6 高齢者施設でのケアの実際
  7 おわりに
 ◆回想法にもとづくファッションショー――過去の“よき思い出”をステージに(山岸裕美子)
  1 はじめに
  2 実施の方法
  3 ファッションショー本番
  4 成果――出演者の輝きと涙、観客の共感と感動
  5 おわりに
 第3節 仲間を作る・ネットワークを作る
 ◆堺から創るピアの時代――仲間による支えあい、そして広がる活動の輪(東照己)
  1 はじめに
  2 ネットワークを超えて
  3 新たなストーリー
  4 ピアの時代
  5 おわりに
 ◆高齢者のスポーツとQOL――地域の中の多様な組織との協働(金子勝司)
  1 はじめに
  2 社協が中心に多様な活動を
  3 地区活動推進協議会とスポーツ活動
  4 まとめ
 ◆広がる卓球療法――リハビリテーションからまちづくりへ(長渕晃二)
  1 はじめに
  2 人をつなぎ、お互い元気に!
  3 卓球の特徴
  4 各地の実践と研究
  5 これからの可能性
 第4節 ワーカーの力
 ◆認知症の行動と心理症状の緩和支援――ありのままを認めることから(佐近慎平)
  1 はじめに
  2 認知症の行動と心理
  3 認知症の行動と心理症状への介入
  4 おわりに
 ◆知的障害者へのパソコン教育――段階的な機器使用支援(平井利明)
  1 はじめに
  2 大切なことは興味・関心
  3 初期段階でのアルファベット教育とローマ字教育
  4 タッチタイピングと声かけの必要性
  5 ローマ字入力から単語、そして文章入力へ
  6 経済的自立を目指して
  7 活用分野の拡大と才能の開発・可能性の追求
 第5節 アセスメントと計画の大切さ
 ◆定年退職後の生活と就労――働くことは最大の希望(倉田康路)
  1 老後は「自己実現」を図るチャンス
  2 アクティブな生活への移行
  3 定年退職後への不安と期待
  4 わたしの定年退職後の生き方
 ◆障害児の長期キャンプ――長期だからこそ見えてきたこと(小柳敬明)
  1 はじめに
  2 長期キャンプを実施した理由
  3 キャンプを計画するにあたって
  4 キャンプでの出来事
  5 おわりに
 第6節 組織を作る
 ◆高齢者による環境活動――誰もがリーダーに(熊谷智義)
  1 はじめに
  2 幅広い活動の展開
  3 “花いっぱい”活動の状況
  4 組織とリーダー
 ◆スペシャルオリンピックスと自立支援――最初の一歩の大切さ(園部さやか)
  1 はじめに
  2 スペシャルオリンピックスとは
  3 スペシャルオリンピックスが目指すもの
  4 地域も変わる
  5 まとめ
 第7節 プログラムの面白さと工夫
 ◆高齢知的障害者へのレクリエーション支援――高齢になってもその人らしく(座間佳世)
  1 はじめに
  2 これまでの活動
  3 これからの課題と活動
  4 ケアホームでの余暇
  5 地域自立生活を目指して
 ◆誰もができるフライングディスク――1枚のディスクから広がる世界(師岡文男・松本耕二)
  1 フライングディスク
  2 多様で、選べる競技種目
  3 誰もが楽しめる
  4 投げて楽しむコーチングを
  5 アダプトするスポーツ
 第8節 環境整備とまちづくり
 ◆高齢者施設の個室文化――生活環境のQOL向上を目指して(米満淑恵)
  1 はじめに
  2 私の部屋づくり
  3 夢ホームの個室
  4 介護職員の自立
  5 個室文化
 ◆認知症高齢者キャンプでまちづくり――イベントをきっかけに意識が変わる(金山竜也)
  1 はじめに
  2 まちづくり+キャンプ場=認知症高齢者キャンプ!?
  3 多くの人を巻き込む仕掛け
  4 たくさんの笑顔
  5 6つの理由
  6 キャンプだからこその気づきがある

第3章 アクティビティの評価(石田易司)
 第1節 評価の意味
 第2節 評価の時間
 第3節 評価する人と手段

 あとがき

前書きなど

 まえがき

 機会があってオーストラリアに滞在することがありました。まず驚いたのが、最初に訪れたラトローブ大学の高齢者福祉の研究機関、リンカーン研究所のドクター、イヴォンヌ・ウェールズさんの研究室の扉の写真です。
 本当の年齢は知りませんが、大学教授で学内の研究機関の責任者だから、また外見や夫の年齢から推し量ってみても、50歳前後であることは想像できます。その女性大学教授が、扉にサーフボードを抱えた水着姿の自分の写真を貼っているのです。
 これには正直驚かされました。サーフィンをする日本の女性大学教員は、私の頭では想像することすらできません。ましてや中高年になって、自分の水着姿を扉に貼ろうとする女性も私の周囲には見当たりません。
 こんな国では、福祉というものが日本とは違っているにちがいないと、障害者や高齢者の活動現場を探索してみました。すると、1981年の国際障害者年の翌年に、“Outdoor Access for All”というガイドラインが出ていることを知りました(ヴィクトリア州青少年スポーツレクリエーション局、1982年)。このガイドラインに従い、ユニバーサルデザインがスキーやキャンプなどの野外活動施設にも及んでいるのです。垂直になっているのが当然だと思っていたプールの壁面が、車いすのままでも入れるように、斜面になっています。いろんな場面に障害者が参加することを想定しているのです。これこそが福祉文化だと思いました。
 高齢者施設でも驚かされました。髪の毛をきれいにセットしている女性に聞くと、1週間に1度は、若い頃から通い慣れた街中の美容院に、日本でいう介護保険(HACC:Home And Community Care)の経費で連れて行ってもらえるというのです。旅行はもちろん、競馬でもカジノでも本人が望むなら、公的な経費で当然支援可能だといいます。
 残念ながら出版にはいたりませんでしたが、もしこのようなオーストラリアの福祉の様子を書いた本を作るなら、題は『介護を超えて』にしようと強く思っていました。オーストラリアでは「福祉=介護」ではないのです。
 戦後、日本社会で国家の責任で福祉というものが制度化された背後には、憲法第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という文言があります。国民の生存権は国家によって保障されたのです。
 しかし、この「最低限度の」という言葉が曲者で、たとえば、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」で「1週間に2回以上、適切な方法により、入所者を入浴させ(以下略)」(第16条の2)と書いてあれば、2回しか入浴させないというのが一般的な運営です。また、介護保険ができる以前の措置費の時代はいうまでもなく、介護保険でもそれ以上の人員配置ができる経費を、行政が施設に保障していないというのが現状でしょう。
 しかし、オーストラリア的な発想であれば、憲法第13条の個人の尊重や幸福追求権「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」を、最低限度の生活の保障より優先して、したいことをもっとわがままに主張して、自分の生きがいを見つけ、自己実現を図ってもいいはずです。「わがまま」という言葉は、現在の日本では否定的に捉えられがちですが、私はそれがある種の「豊かさ」の象徴だと思うのです。潜在化しているニーズを顕在化させるために、きちんと自己主張できるということが、福祉の現場でも尊重されなければならないはずです。現在の日本という国では、もう少しわがままを言っても、公共の福祉に反しないレベルに達していると思うのです。
 それができる人とできない人の間に格差がある、という人もいるでしょう。さらに豊かにと言うと、格差を助長するような意見とも受け止められそうですが、「一般の市民ができていることを障害者や高齢者も当たり前にできる」という、この「当たり前」がノーマライゼーションの「ノーマル」にあたるのです。この考え方から言うと、福祉の対象者が我慢をし続けることこそ格差を容認することに他なりません。4人部屋や、入浴時の男性介護者による女性介護などは、入所者の我慢によって成り立っているのです。格差を埋めるためには、低いところに置かれた人が我慢するのでなく、全体をより高めなければならないのです。
 そんなことを考えながら、福祉対象者の新しい生き方を求めるための試みを紹介し、福祉文化という思想をよりたくさんの人に理解してもらうことが、この本の出版の意図です。

(…後略…)

上記内容は本書刊行時のものです。