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出版者情報
ナショナリズムとナショナル・インディファレンス
近現代ヨーロッパにおける無関心・抵抗・受容
- 初版年月日
- 2023年6月30日
- 書店発売日
- 2023年6月28日
- 登録日
- 2023年5月16日
- 最終更新日
- 2024年1月24日
書評掲載情報
2023-09-02 |
朝日新聞
朝刊 評者: 前田健太郎(東京大学教授) |
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紹介
本書は、幅広い射程を持つ「ナショナル・インディファレンス(国民への無関心)」現象の歴史的な意義を追究する。19世紀から20世紀後半までの、ソ連を含むヨーロッパ各地の多彩な事例を取り上げ、様々なアプローチのもと、ナショナリズム理解に画期的な切り口を与える。本書を読めば、この先「ナショナル・インディファレンス」を念頭に置かずにナショナリズムの過去・現在・未来を見ることはできなくなるだろう。
原著:Maarten Van Ginderachter and Jon Fox, eds., National Indifference and the History of Nationalism in Modern Europe (Abingdon: Routledge, 2019)
目次
はじめに
序 章 ナショナル・インディファレンスと近代ヨーロッパ・ナショナリズムの歴史(マールテン・ヴァン=ヒンダーアハター/ジョン・フォックス[金澤周作訳])
1 「ナショナル・インディファレンス」と「想像の非共同体」の定義
2 課題と挑戦
3 本書の概要
第1章 他のことで頭はいっぱい──19世紀ベルギーにおける国民文化プロジェクトの障害と限界(トム・ヴルスハフル[中辻柚珠訳])
1 多言語的過去と現在への対応
2 両立性の構築
3 わずかなナショナリズムではあるものの
4 道徳的義務としてのナショナリティ
5 家 業
6 頭の中の他所事
7 推進力の喪失
第2章 ナショナル・インディファレンスと国民的献身の往還──第一次世界大戦期ロシアにおけるトレンティーノ出身戦争捕虜の軌跡(シモーネ・A・ベッレッツァ[林 孝洋訳])
1 トレンティーノにおける帰属意識とロシア帝国の捕虜政策
2 開戦に対するナショナル・インディファレンス
3 祖国を選ぶこと
4 下からの国民化,上からの国民化
5 国民の代わりとしての宗教
6 結 論──帰属の大戦
第3章 移行途上の迷い?──アドリア海北部におけるハプスブルク帝国の遺産,国家と国民形成,新ファシスト秩序(マルコ・ブレシャーニ[濱口忠大訳])
1 ハプスブルク帝国消滅後にみるナショナル・インディファレンス
2 日々の敗北
3 フラストレーションとノスタルジーのあいだで
4 あまりに少数のナショナリスト,あまりに多数の「オーストリアびいき」
5 イストリア──ナショナリストのための土地?
6 イストリア農村部のファシズム
7 結 論
第4章 ナショナル・インディファレンスとトランスナショナル企業──チェコの製靴会社バチャのパラダイム(ザカリー・ドルシャル[中辻柚珠訳])
1 ポーランドでの事件
2 大規模なナショナル・インディファレンス
3 バチャの発展
4 企業都市をつくる
5 国民的なものに無関心な管理職社員たち
6 ナショナル・インディファレンスを教える
7 ナショナリストの要求
8 ミュンヘン後の排外主義
9 結 論
第5章 ナショナリズムと無関心のあいだ──戦間期ユーゴスラヴィアにおける無関心の緩慢な排除(フィリプ・エーデルヤッツ[村上 亮訳])
1 ユーゴスラヴィアにおける無関心の実像
2 職業とエンターテインメントとしての政治活動
3 ユーゴスラヴィア国家に対する国民的ではない反対
4 国民化する不満
5 どちらかの側に与する
6 混乱したナショナリズム
7 結 論
第6章 フランス人らしさへの複数の道──ナショナル・インディファレンスとアルザスのフランス復帰,1919-1939年(アリソン・キャロル[谷口良生訳])
1 フランスにおける国民統合とナショナル・インディファレンス
2 フランスとドイツのあいだで
3 アルザスのフランス復帰
4 ナショナル・インディファレンスを求めて
5 フランス人らしさへの複数の道
第7章 政治を越えて──日常的民族実践としてのナショナル・インディファレンス(ガーボル・エグリ[姉川雄大訳])
1 ナショナル・インディファレンスか,日常的民族実践か
2 戦間期ルーマニアの事例
3 結 論──資料と展望
第8章 国民への無関心・統計・構築主義パラダイム──戦間期ポーランドの国勢調査におけるトゥテイシ(「ここ出身の人々」)欄(モルガン・ラベ[福元健之訳])
1 ナショナル・インディファレンスで統計を問う
2 統計とナショナリティ
3 ポーランドの国勢調査におけるトゥテイシ
4 ポーランド統計局の裏側で──ナショナリティ問題研究所
5 「痕跡」の歴史に向かって
6 国民と結びつかない共同体の地政学
7 誰がトゥテイシなのか?──国勢調査から民族学的調査へ
8 結 論
第9章 20世紀前半の上シレジアにおける道具的ナショナリズム(ブレンデン・カーチ[河合竜太訳])
1 道具的ナショナリズムと価値主導的ナショナリズム
2 分割された領土,分割された忠誠心
3 妥協の民族共同体
4 「ドイツ人」から「ポーランド人」へ
5 結 論
第10章 「わたしは諸国民の境を取り払った」──第二次世界大戦終結期上シレジアにおける国民の乗り換えとローマ・カトリック教会(ジム・ビョーク[河合竜太訳])
1 国民の乗り換えは罪か──明確な教義の不在
2 カトリックの諸言説
3 ドイツ民族リスト上の人々──裏切り者か,英雄か
4 ナショナル・インディファレンティズム
5 結 論
第11章 「ソヴィエト連邦市民──なんと荘厳な響きでしょう」──ポスト・スターリニズム期ソ連の投書・ナショナリティ政策・帰属意識(アナ・ウィティントン([福元健之訳])
1 ある市民の手紙から
2 ソヴィエトの理論および実践における民族,国民,公民意識
3 投書する市民と1977年憲法
4 ソヴィエト人民の現実化
5 結 論
第12章 結 論──(再論)ナショナル・インディファレンスと近代ヨーロッパ・ナショナリズムの歴史
(ジョン・フォックス/マールテン・ヴァン=ヒンダーアハター/ジェイムズ・M・ブロフィ[桐生裕子訳])
1 地理的拡張
2 時間的拡張
3 適用方法の精緻化
4 展 望
訳者解題1 新しいナショナリズム研究への展望(福元健之・中辻柚珠)
訳者解題2 ナショナル・インディファレンス研究と東中欧(桐生裕子)
おわりに
人名・事項・地名索引
上記内容は本書刊行時のものです。