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出版者情報
〈交感〉 自然・環境に呼応する心
- 書店発売日
- 2017年3月31日
- 登録日
- 2017年3月14日
- 最終更新日
- 2018年9月6日
紹介
人類は自然との心的・非物質的な交感関係をつねに生きてきたのではないか。近代社会はそのような交感関係を失うか、もしくは切り捨てる世界に突入したのではないか。
本書は自然と人間のあいだに生成・形成される交感という現象を多面的に浮き彫りにする試みである。〈交感論〉を「自然―人間の関係学」を思考する環境学の一分野として位置づけ、その学的展開を世に問う。環境に関心問題のある一般読者にもおすすめの一冊。
目次
序 論 交感と反交感――「自然―人間の関係学」のために(野田研一)
1 交感の学にむけて
2 自然の心的な価値を測る
3 世界はヒエログリフ――交感の原理
4 交感、変身、他者性
5 脱テクスト化の戦略――エドワード・アビー
6 反〈交感論〉的視座
第Ⅰ部 交感論
一 応答
第1章 痕跡の風景〈苦海浄土〉三部作における関係の世界(結城正美)
1 〈存在〉の世界から〈関係〉の世界へ
2 痕跡の思考
3 見えざる風景
4 「復原」が示唆するもの――交感と環境人文学
第2章 「場所」との交感――崎山多美と「シマ」の想像力(喜納育江)
1 他者としての場所/場所にとっての他者
2 崎山多美と「シマ」をめぐる想像力
3 狭間ボーダーとしての「シマ」との交感
第3章 「わたし、キティ」ワークショップ――生命の表象、あるいは人間なるものの再定義(中川僚子)
1 人間と人間であらざるものとの境界
2 第一回「キティは気にしない」
3 第二回「キティはあなたの救いであり、死でもある」
4 第三回「だまされたいと欲しているから、だまされるの」
第4章 ソローにおける事実の開花と真理としての経験(フランソワ・スペック[訳:関根全宏])
1 高次のリアリティ
2 エマソン主義を超えて
3 経験の真理
4 〈実体〉対〈影〉
5 例証としての経験
二 ことば
第5章 交感と心象スケッチ――脱人間化と逆擬人法(矢野智司)
1 交感の体験をそのとおり書きうつした言葉
2 自己と他者
3 「感ずる」ことと心象スケッチ
4 「こゝろ」と現象
5 現象を正しく書きうつす言葉の変容と異なる歴史の発見
6 第四次延長のなかでの主張
第6章 鉄柵のなかの/むこうの〈自然〉――日系アメリカ人強制収容所における自然表現(北川扶生子)
1 私と自然をつなぐもの
2 閉じこめられて生きること
3 幻想の〈日本〉、つくりかえられる〈日本〉
4 戦場から収容所へ――兵士が見た自然
5 境界をつくる言葉、境界をすりぬける言葉
第7章 反復から〈交感〉へ――石牟礼道子の言語世界(山田悠介)
1 石牟礼道子の「言葉」へ
2 おもかさまとみっちんのやりとり
3 母の言葉と「七つの子」
4 人と、人ならざる存在との「コミュニケーション」
5 「反復」と〈交感〉
第8章 Mana交 感、儀礼、魔法のフォーミュラ――現代エコクリティシズムの所在/彼岸(浅井優一)
1 ウィルダネス、その所在の転回
2 儀礼論の系譜
3 今ここの神話、あるいは死にゆく神
4 南太平洋のアニミズム
5 脱・転回、脱・人間主義
三 コスモロジー
第9章 「山の身になって考える」――汎神論的交感と生態学的交感(河野哲也)
1 環境哲学と日本の問題
2 自然環境の経験と思想
3 山の身になって考える
4 生態学的交感
5 自然における人間の地位
6 ディープ・エコロジーの経験
第10章 人はトリを食べ、トリは動物を助ける――ボルネオ島プナンの〈交感〉の民族誌のための雑記(奥野克巳)
1 人間とトリが織りなす世界
2 ヒト、トリを食べ、トリを悼み、トリを聞く
3 トリ、実りを告げ、動物を助ける
4 〈交感〉の民族誌に向けて
第11章 未知なる囁きへの欲求――鴉鳴占卜にみる交感の諸相とアジア的繫がり(北條勝貴)
1 はじめに――闇のなかの野生
2 『開元占経』禽占――漢系占書のなかの鴉鳴①
3 鳥語と鳥情占――漢系占書のなかの鴉鳴②
4 敦煌文書鴉鳴占卜書の周辺
5 おわりに――烏をみる/鳥にみられる
第Ⅱ部 交感幻想
声
1 石の声は聴こえるか(崎山多美)
2 誰が歌ったのか?――風聞の身体、名もなき実在論リアリズム、あるいは奄美群島の宮澤賢治(今福龍太)
3 老い・自然・詩(小池昌代)
4 木の匂いを嗅ぐ者(Tree-smeller)!(スコット・スロヴィック[訳:藤原あゆみ]
喩
5 『源氏物語』の「交感」小考――篝火の巻、玉鬘物語をめぐって(原岡文子)
6 加藤幸子の交感世界――『池辺の棲家』の源流(山本洋平)
7 〈交感〉する詩学――『白鯨』における〈私〉と海(関根全宏)
8 交感のチャネル(髙野孝子)
森
9 新約、日光山。――一本の木を巡る交感風景(宮嶋康彦)
10 森との〈交感〉――フォークナーの「熊」、近代以前のまなざし(竹内理矢)
11 森のなかで「インタープリター」という仕事をしながら考えた「交感」(川嶋 直)
12 森を抜ける――空洞小譚(中村邦生)
索 引
上記内容は本書刊行時のものです。