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「私」から考える文学史
私小説という視座
- 書店発売日
- 2018年10月31日
- 登録日
- 2018年10月6日
- 最終更新日
- 2018年10月10日
紹介
日本固有の文学ジャンルと考えられている「私小説」。
明確な定義がないなか、読者は一体なにを作者の「私」像として読み取っているのだろうか?
本書では、従来「私小説」とみなされてこなかった作品や周辺ジャンルである日記や紀行文、映画や漫画などを含めた文学史の構築を試みるとともに、作り手である現代作家の水村美苗氏、佐伯一麦氏、青木淳吾氏への 「私」をめぐるインタビューを収録。
明治以降の「私小説」を研究と創作の両面から再検討する。
目次
〈私小説〉という視座 本書の方法と構成について 梅澤亜由美・大木志門
【インタビュー】私小説という「フィクション」 水村美苗
Ⅰ 明治期の「私」
田山花袋と徳田秋聲における〈「私」性〉と「文体」の生成 大木志門
「書く」女の生活と戦略 田村俊子「彼女の生活」とジャーナリズム 鬼頭七美
郡虎彦の初期作品における〈私〉の様相 太田 翼
変容する〈透谷〉 小田切秀雄の文学史把握とポジショナリティ 黒田俊太郎
【コラム】〈私〉の旅日記―坪内逍遙「旅ごろも」 富塚昌輝
【コラム】ルポルタージュと労働者手記 金子亜由美
【コラム】モデルの手記と小説―岡田(永代)美知代 井原あや
【コラム】帰朝者の文学―永井荷風 多田蔵人
Ⅱ 大正期の「私」
一九二〇年の〈「私」小說〉 白樺派から奇蹟派、そして宇野浩二へ 梅澤亜由美
告白の相手は誰か 佐藤春夫の〈詩〉と〈私小説〉 河野龍也
菊池寛〈啓吉もの〉と芥川龍之介〈保吉もの〉の間 小澤純
真摯な自己語りに介入する他者たちの声 田中祐介
【コラム】少女雑誌における「私語り」―『少女世界』を中心に 嵯峨景子
【コラム】看取り・介護 梅澤亜由美
【コラム】幻想の系譜―藤枝静男の「私小説」を中心に 大木志門
【コラム】関東大震災直後のルポルタージュと小説 小林洋介
【インタビュー】自画像としての私小説 佐伯一麦
Ⅲ 昭和初期の「私」
一九二〇年代後半の横光利一テクストにおける〈私小説性〉の諸要素
〈「私」性〉と〈事実性〉による享受のシステム 小林洋介
伊藤整における私小説の模索と転回 「得能もの」から自伝小説「北国」へ 尾形大
〈私〉を更新する 宮本百合子〈伸子〉連作について 竹田志保
個人的なことは政治的なこと 〈私性〉から見た転向文学 山根龍一
【コラム】文学の〈素人〉性―北條民雄と川端康成 尾形大
【コラム】戦争と私語り―原民喜の場合 大原祐治
【コラム】「文学」史のキャラ化―伊藤整から高橋源一郎へ 小澤純
【コラム】批評の原点―江藤淳における〈私〉 河野龍也
Ⅳ 戦前~戦後の「私」
〈私〉を応用する 一九四〇年代前半の太宰治小説 井原あや
「私」と「歴史」のあいだ 坂口安吾と私小説 大原祐治
大岡昇平文学における〈私〉 短篇小説「妻」を中心に 立尾真士
安岡章太郎『私説聊斎志異』論 「私」の小説化 小嶋洋輔
【コラム】福島次郎『三島由紀夫―剣と寒紅』の提起するもの 太田翼
【コラム】「主観的」な「風景」をめぐって―塚本晋也版『野火』 立尾真士
【コラム】〈私〉をクロスジェンダーする―鷺沢萠の場合 康潤伊
【コラム】マンガ家になるマンガ―東村アキコ『かくかくしかじか』 小嶋洋輔
【インタビュー】「私」から遠く離れて 青木淳悟
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上記内容は本書刊行時のものです。