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出版者情報
両膝を怪我したわたしの聖女
- 初版年月日
- 2025年5月12日
- 書店発売日
- 2025年5月16日
- 登録日
- 2025年4月25日
- 最終更新日
- 2025年4月25日
紹介
決 壊 す る 文 体
――圧倒的な感情がほとばしり、膨れ上がり自壊する言葉の群れが未熟な欲望を覆い尽くす。10歳の少女らを閉じ込めるひどく退屈な夏休み、早熟なふたりの過激で破滅的な友情。
スペイン最南カナリア諸島発、世界18カ国語に翻訳の問題作。
◇ ◇ ◇
スペイン・カナリア諸島に暮らす、10歳の「わたし」と親友イソラ。
せっかくの夏休みは、憂鬱な曇天に覆われていた。薄暗い貧困の地区を抜け出して、陽光のふりそそぐサン・マルコス海岸に出かけたいのに、仕事に追われる大人たちは車を出してやる余裕がない。ふたりの少女は退屈しのぎのため、不潔にして乱暴、猥雑で危うい遊びにつぎつぎ手を染める。
親友というには過激すぎる、共依存的関係性。
「わたし」にとってイソラはまるで聖女のように絶対的な存在だった。イソラが両膝を怪我すれば、舌でその血をなめとった。イソラの飼い犬になりたかった。粗暴な物語に織り込まれた緻密な象徴の数々。子どもらしいイノセンスとは無縁の、深い悲しみに由来する頽廃と陶酔の日々。
イソラと共にある日常は永遠に続くかに思われた。しかし――
◇ ◇ ◇
Andrea Abreu, Panza de burro (2020)
装丁:コバヤシタケシ
装画:さめほし「夜明けの海」
目次
あんなに大胆で、あんなに怖いもの知らずに
ほんのちびっとだけ
イソラ・カンデラリア・ゴンサレス=エレラ
松葉の下のキノコ
これは雨になりそうだ
クリームを、首にクリームを
タイヤをきしませながら行くメタリックのビマー
ヨソモンは臭い
ウサギを嚙まずに丸ごと食べちゃう
フアニータの叫び声は十字路の向こうまで響いた
イソラを食べてしまう
まだはつ明されてないような愛ぶをしてやるぜ
イソラの足がアスファルトを踏む
猟犬みたいにやせっぽち
こすりつける
両膝を怪我したわたしの聖女
イエス・キリストの小さな顔
その日はキャベツシチューしかなかった
iso_pinki_10@hotmail.com
ペペ・ベナベンテのBGM
クロウタドリの羽みたいに黒い目
エドウィン・リベラ
ジャガイモひとつごとに半キロ
胴体にナイフ
イソラが存在しなかったときみたいに
女に残る最後のもの
わたしたちはこんなふうに夜の蛾のように
ひとりでこする
這い回るトカゲ
広場の上につるした色紙
訳者あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。