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孤独の俳句
「山頭火と放哉」名句110選
- 初版年月日
- 2022年11月29日
- 書店発売日
- 2022年11月24日
- 登録日
- 2022年10月18日
- 最終更新日
- 2024年10月25日
書評掲載情報
2023-02-12 | 読売新聞 朝刊 |
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紹介
こんな時代だからこそ心に沁みる名句がある
「孤独」や「孤立」を感じる時代だからこそ、深く心に沁みる名句がある。
漂泊・独居しながら句作を続けた“放浪の俳人”種田山頭火と尾崎放哉の自由律俳句が今、再び脚光を浴びているという。その厖大な作品の中から、現代俳句の泰斗・金子兜太が生前選んだ山頭火55句と、お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹が選んだ放哉55句を合わせて110句を厳選・解説した“奇跡の共著”。
労れて戻る夜の角のいつものポストよ 山頭火
……東京暮らしには多少の余裕が出てきたものの、妻と別れて一人身になった孤独感は、やはり深かったのだろう。そんな折だから、町角のポストに友だちのような親しみを感じるのである。(金子)
こんなよい月を一人で見て寝る 放哉
一人で月を眺めていて、「よい月だな」と感慨にふけることがある。……だが、どこかでこの喜びを誰とも分かち合うことができない淋しさも感じてしまう。……一人だからこそ感じることのできた喜びと淋しさが句の内部で循環している。(又吉)
うしろ姿のしぐれてゆくか 山頭火
……感傷も牧歌も消え、生々しい自省と自己嫌悪も遠のいて、宿命をただ噛みしめているだけの男のように、くたびれた身体をゆっくりと運んでいる姿が見えてくる。(金子)
咳をしても一人 放哉
……誰もいない孤独が満ちた部屋で咳をする。その咳は誰にも届かず、部屋の壁に淋しく響く。一つの咳によって部屋に充満していた孤独や寂寥が浮き彫りになる。(又吉)
「孤独」を磨き続けた2人の自由律の名句を“再発見”する一冊。
【編集担当からのおすすめ情報】
戦後の俳句界を牽引し続けてきた金子兜太氏が亡くなったのは、2018年のことでした。生前、山頭火の名句55句を厳選して解説した雑誌(ムック)がありましたが、長らく入手困難になっていました。その選句とインタビューをあらためて書籍の形で甦らせたいというのが、本書の企画の出発点でした。
放哉について55句を選び、解説する大役を引き受けてくれたのが、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹氏です。又吉氏は芸能活動の一方で、小説『火花』で芥川賞を受賞。さらに、自由律俳句の句集(共著)や俳句に関する著書もあり、今も句作を続けていることから、放哉の選句と解説を依頼したのでした。
そうした経緯のため、金子氏と又吉氏は直接相見えることはなかったものの、山頭火と放哉の自由律俳句を介することで、今回の“奇跡の共著”が誕生することになりました。
選句された110句は大きめの活字を使い、コンパクトな新書判ながら1句1句をじっくり鑑賞しやすくなっています。本書を手に旅に出る――そんな読み方もおすすめです。
目次
はじめに――今なぜ山頭火・放哉なのか 左古文男
第1部●人生即遍路 種田山頭火
「うしろ姿のしぐれてゆくか」――金子兜太・選
放浪の軌跡――略年譜と行脚地図
金子兜太選「山頭火」名句55選
選句にあたって 「感覚で射止めた山頭火の句には、従来の俳句にはない新鮮な感銘がある」
キーワード解説――母への思い/流転・変転/酒癖と自戒/山林独居の日々/放浪行乞/「其中庵」と「風来居」/終焉の地・松山/ころり往生
第2部● 独居無言 尾崎放哉
「咳をしても一人」――又吉直樹・選
放浪の軌跡――略年譜と流浪地図
又吉直樹選「放哉」名句55選
選句にあたって 「放哉の句を読んで最初に感じたのは、言葉の強さですね」
キーワード解説――名門士族の跡取り/一高俳句会/東大入学と恋の挫折/就職浪人/「腰弁」への失望/無一物の身/奉仕と托鉢/「死に場所」を求めて/終焉の地「南郷庵」
ゆかりの地を訪ねる
ブックガイド
あとがきにかえて 又吉直樹
上記内容は本書刊行時のものです。