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増補 総力戦体制と「福祉国家」
戦時期日本の「社会改革」構想
- 初版年月日
- 2024年7月12日
- 書店発売日
- 2024年7月17日
- 登録日
- 2024年6月10日
- 最終更新日
- 2024年7月10日
紹介
「福祉国家」日本のルーツは本当に戦時期にあるのだろうか──厚生省設立や国民健康保険制度などの「戦時社会政策」をめぐる政府や地方と軍部とのせめぎ合いに着目し、戦後のあり方とは異なる、戦時期の総力戦体制=「福祉国家」の姿を浮かび上がらせる。戦時人口政策に大きな役割を果たした社会学者・高田保馬を論じた補章を付す。
目次
序 章 戦時期日本の「社会国家」構想
ファシズム・総力戦・福祉国家
「天皇制ファシズム」論
「日本ファシズム」論
総力戦体制論
福祉国家論
福祉国家=総力戦体制源流論
本書の課題
第一章 厚生省の設立と陸軍の「社会国家」構想
1 厚生省の設立過程
「社会保健省」と「衛生省」
内務省と陸軍の角逐
2「壮丁体位」低下の実像
「壮丁体位」低下問題に関する通説的理解
「壮丁体位」低下の実態
体格等位の変動の意味するもの
3 陸軍省医務局長・小泉親彦
小泉の提唱した軍陣衛生学
「人的戦力」とは何か
4 小泉の「壮丁体位」低下論
「筋骨薄弱者」と結核
「壮丁体位」低下の社会的要因
5 「衛生省」構想の特徴
モデルとしての「全体主義」国家
衛生主義的「社会国家」
6 衛生主義的「社会国家」構想の挫折
「保健社会省」設置の理由
陸軍の巻き返しと大臣人事
「衛生省」構想の挫折
第二章 広田―第一次近衛内閣期の「社会政策」と「社会国家」
1 二・二六事件と「農村社会政策」
二・二六事件の衝撃と「社会政策」の復活
「農村社会政策」の浮上
2 農村医療問題と国民健康保険
「農村社会政策」と国民健康保険
医療組合運動の登場
「医療の社会化」と医療利用組合
国民健康保険と医療利用組合
地域医療システムとしての医療利用組合
産業組合の国保「代行」と農村保健運動構想
国保代行問題の帰結
3 農村過剰人口と二つの人口政策論
「農村過剰人口」という認識
一九三〇年代の人口動向
上田貞次郎の商工主義的人口政策論
那須皓の農本主義的人口政策論
二・二六事件と農本主義的人口政策論の政策化
農村社会改革構想としての分村移民事業
職業行政と商工主義的人口政策論
4 生産力拡充政策と「社会国家」
軍備拡大と生産力拡充問題
近衛内閣における「社会政策」
「農村社会政策」のゆくえ
第三章 戦時労働政策と「社会国家」
1 戦時工業化と生産力主義的「社会国家」
日中戦争と「第二の産業革命」
戦時下における労働力問題
「人的資源」配置策としての「戦時社会政策」
「戦時社会政策」=「社会国家」と日本経済の「再編成」
2 労務動員計画と戦時労働政策
生産力拡充計画と労務動員計画
労務管理調査委員会の労働政策構想
3 労働者年金保険の成立
年金保険構想の登場
労働者年金保険制度の再浮上
賃金臨時措置令と職場の荒廃
4 戦時住宅問題と住宅営団
労務者住宅問題と住宅供給計画
住宅営団の設立
西山夘三の戦時住宅政策論
住宅営団の現実
5 生産力主義的「社会国家」の歴史的位置
第四章 戦時人口政策と「社会国家」
1 日中戦争下における人口政策論の転換
人口政策論の転換過程
舘稔の人口増殖論
人口増殖政策の根拠
2 民族問題としての人口問題
人口問題の再定義
古屋芳雄と民族科学
日本学術振興会第一一特別委員会
3 「人口政策確立要綱」と民族―人口主義的「社会国家」
第二次近衛内閣と「基本国策要綱」
目標としての人口一億
人口政策の具体案
4 戦時人口政策と農業人口問題
農業人口をめぐる対立
農業「近代化」と「適正規模農家」論
民族=人口政策論と農業政策論
「人口政策確立要綱」と「農業政策要綱」
戦時「農地改革」構想と「農業新体制」
農業人口「定有」の論理
「農業政策要綱」の挫折
5 戦時人口政策と国土計画
国土計画への期待
第四回人口問題全国協議会と国土計画
人口政策的国土計画論
6 戦時人口政策の屈折
第五章 「健兵健民」政策と戦時「社会国家」
1 日中戦争下の医療制度改革論
医薬制度調査会と「医療制度改善方策」
医薬制度調査会と産業組合
日中戦争下の農村保健問題
「農業新体制」と全国協同組合保健協会
2 国民厚生団と日本医療団
小泉の医療制度改革構想
国民厚生団の構想
国民厚生団から日本医療団へ
日本医療団の現実
3 戦時下の国民皆保険
小泉親彦と国民健康保険
国保普及五ヶ年計画と「厚生組合」
国民健康保険組合普及運動
戦時「社会国家」の基盤
戦時国民皆保険の内実
4 国民体力管理と健民修錬
国民体力法
「結核対策要綱」と健民修錬
総力戦下の「壮丁体位」低下
体力章検定と基礎体力
アジア・太平洋戦争下の体力章検定
大日本体育会と「国民体育」
終 章 戦時「社会国家」の歴史的位置
補 章 高田保馬と戦時人口政策
1 高田保馬の社会学
高田における社会学
「高田社会学」の理論体系①―社会の構造
「高田社会学」の理論体系②―社会の変動
「高田社会学」の「普遍性」
2 高田保馬の人口論
高田の「貧乏論」
高田の人口研究と産児制限問題
フランスの出生主義的人口論
高田の民族主義的人口論
「民族=人口主義」というイデオロギー
高田の農村論
3 総力戦体制と高田保馬
日中戦争と高田保馬
戦時人口政策と高田保馬
国土計画と高田保馬
4 おわりに
注
あとがき
岩波現代文庫版あとがき
索 引
上記内容は本書刊行時のものです。