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新SDGs論 田中 治彦(著/文) - 人言洞
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新SDGs論 (シン エスジーディーズ ロン) 現状・歴史そして未来をとらえる (ゲンジョウ レキシ ソシテ ミライ ヲ トラエル)

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発行:人言洞
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ12mm
重さ 212g
192ページ
並製
価格 1,900円+税
ISBN
978-4-910917-11-5   COPY
ISBN 13
9784910917115   COPY
ISBN 10h
4-910917-11-X   COPY
ISBN 10
491091711X   COPY
出版者記号
910917   COPY
Cコード
C3037  
3:専門 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年1月5日
書店発売日
登録日
2023年10月24日
最終更新日
2024年1月14日
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書評掲載情報

2024-10-01 新英語教育  2024年10月号(No.662)
評者: 名古屋学院大学 工藤泰三
2024-09-01 月刊公民館  2024年9月号
2024-09-01 日本家庭科教育学会誌  2024年8月Vol.67-2
評者: 筑波大学附属駒場中学校 植村徹
2024-08-31 Gakken教育ジャーナル  Vol.25
2024-02-03 全私学新聞  2024年2月3日
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紹介

 2023年はSDGsの中間年であり,2024年から後半戦となる。SDGsの周知度が9割に達した今,SDGsの啓発の時代は終わり,今後はSDGsを具体的に推進する時期にあたる。そのためには表層的ではなく,その問題の歴史的な意義に立ち返って考え,理解と行動に移していくことが求められる。
 本書の副題に〈現状・歴史そして未来をとらえる〉とあるように,第一部ではSDGsの前身となる地球サミット以来のSDの考え方や具体的な対策の変遷をふまえた2023年の[現状]ついて解説する,第二部ではSDGsに至るまでの[歴史]についてさらに深掘りする,第三部では2030年以降のグローバル課題がどのようになっていくのかの[未来]を展望する。
 2016 年に日本で最初のSDGs本を書いた著者が,持続可能な社会を目指すすべての人々に向けてわかりやすく丁寧に論じた必読書。

目次

第一部 SDGsのルーツを探る
 第1章 SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?
 第2章 持続可能な開発(SD)とは何か?
 第3章 ミレニアム開発目標(MDGs)
 第4章 ESD・地球市民教育
第二部 グローバル課題の戦後史
 第5章 戦後4つのグローバル課題
 第6章 南北問題―開発と援助
 第7章 環境問題―公害と熱帯林
 第8章 人権問題―「誰一人取り残さない」
 第9章 東西問題―核と平和
第三部 SDGsの未来
 第10章 2030年以降のグローバル課題
 第11章 SDGsを「自分事」に
 〈SDGs・グローバル課題関連年表〉

前書きなど

はじめに
 SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を近頃よく耳にするようになった。2023年2 月の調査ではSDGs の認知率は91.6 %に達している(電通第6 回SDGs に関する生活者調査)。これは最近メディアでSDGs を取り上げる機会が増えたことや,全国の学校でSDGsを教えていることなどの結果である。「国連ESD(持続可能な開発のための教育)の10年(2005―14)」がその最終年になってもESD の認知度が2 割に満たなかったことと比べると大きな違いがある。
 SDGs は2015年9月の国連総会で採択された国際的な開発目標であり,2030年までの目標達成を目指している。SDGs には,貧困根絶,教育促進,環境保全などの17の目標がある。17というのは多いようにも思うが,200カ国近くから成る地球社会が解決を目指すべき課題は数十,数百にも及ぶであろうから,17にまとめあげたことはむしろ少ないと言えるかもしれない。17の開発目標にはそれぞれ歴史的な経緯がある。それらを知っておくことはSDGs を理解するうえでも大切なことである。いっぽう,SDGs の諸目標が2030年にすべて達成できるとは考えにくい。目標13の地球温暖化ひとつとっても,2030年までにカーボン・ニュートラルを達成することはまず不可能である。日本政府は2050年まで,中国は2060年までの達成を目標としている。そう考えると,SDGs の枠組みは多少変化があるにしろ,今後30年以上にわたって続くと予想される。すなわち,読者の皆さんの残りの人生の大半がSDGs につながる課題を抱える地球社会に暮らすことになる。
 SDGs の周知度が9 割に達したといっても,個々人の行動やライフスタイルがSDGs 達成に向けて意識されているわけでは必ずしもない。お笑いのネタでも「最近エコバッグを使っています」「それSDGs ですね」のような場面があり,やや受けはしているものの,その程度の理解,すなわちリサイクルや節約がSDGs につながるというような単純な理解であることは多い。あるいは,それ以上の行動をとろうにも,どのようにしたらよいのかわからないといったこともあるであろう。教育現場では2020年度以降,小学校から大学までSDGs が教えられているが,その内容は17目標の表面的な理解に留まっていることが多い。教師が模範を示そうと,SDGs 達成に向けて普段心がけていることをあげている事例もあるが,その行動自体がリサイクルや節約の域を出ていない。
 2023年がSDGs の中間年にあたり,2024年から後半戦となる。SDGs の周知度が9 割に達した今,SDGs の啓発の時代は終わり,今後はSDGs を具体的に推進する時期にあたる。そのためには表層的ではなく,その問題の歴史的な意義に立ち返って考え,理解と行動に移していくことが求められる。SDGs に関する著書は2023年8月現在,1000件超にものぼっている(Cinii-Books 調べ)。筆者が2016年に日本で最初のSDGs 解説書である『SDGs と開発教育』(学文社)を上程したときには,SDGs に関する文献がこのように多く発刊されることは想像できなかった。しかしながら,1000冊を超える文献でも,SDGs の歴史的な意義について解説している書籍は見当たらない。
 SDGs という言葉は聞いたことがあっても,SD(持続可能な開発)とは何かを説明できる人は多くはないであろう。持続可能な開発(Sustainable Development)という用語が現在の意味で登場したのは1987年のブルントラント委員会報告書『我々の共通の未来』であり,それが国際公約として認知されたのが1992年の地球サミット(国連環境開発会議)であった。1990年代には環境,開発,人権,ジェンダー,人口問題などの国際会議が開催されて,それらの課題が相互に関係し合っていること,同時に解決していかねばならないグローバル課題であるという認識が高まった。これらの課題を統合して,2000年の国連ミレニアム総会でMDGs(ミレニアム開発目標,2000―15年)が策定された。SDGs の前身としてMDGs があるということもあまり知られていない。したがって,SDGs を深く理解するためには少なくとも1992年のリオデジャネイロ・地球サミットまで遡る必要がある。
 本書の副題に〈現状・歴史そして未来をとらえる〉とあるように,第一部では,SDGs の前身となる地球サミット以来のSD の考え方や具体的な対策の変遷と中間年にあたる2023年の状況ついて解説する[現状]。SDGs の直接のルーツのみに関心のある方やお時間に制約のある方はここから第三部に飛んでいただいてもよいだろう。
 第二部では,SDGs に至るまでの歴史についてさらに深掘りする[歴史]。持続可能な開発には,環境問題と開発問題の統合というテーマがあった。環境問題がグローバルな課題として認識されるようになったのは1972年のストックホルムの人間環境会議以来である。開発問題がグローバルな課題となったのは1960年の「国連開発の10年」以降である。さらに,SDGs のスローガンは「誰一人取り残さない」であり,グローバルな人権問題が重要なテーマとなっている。人権問題は1948年の世界人権宣言にまで遡ることができる。SDGs の16目標は「平和と公正をすべての人に」である。平和と核の問題は第二次世界大戦終結時にすでに発生していた東西問題が原点である。すなわち,SDGs が扱っている17目標は,平和問題(東西問題),開発問題(南北問題),環境問題,人権問題という4つのグローバル課題が重層的に折り重なって成立している。第二部では,この4 つのグローバル課題についてていねいに説明し,SDGsの成り立ちや構造をより明らかにしたい。
 第三部では,2030年以降のグローバル課題がどのようになっていくのか,若干の展望を述べてみたい[未来]。地球環境と人間社会の持続可能性を問うたSDGs は,2030年以降も名称を変えて続いていくと考えられる。コロナ禍やウクライナ紛争により,SDGs が2030年に達成できるかどうかも危ぶまれている。先に述べたようにカーボン・ニュートラルの目標は2050―60年まで続く。ここでは,人口動態,気候変動,生物多様性,貧困と格差,移住労働者などの課題を扱う。第11章では,いかにSDGs を自分事にすることができるかを論ずる。SDGs について具体的に何をどうしたらよいのかに関心がある方は第11章からお読みいただいてもよいであろう。   田中 治彦

版元から一言

 本書は、開発教育の研究に端を発し日本におけるSDGs研究の草分け的存在である著者が,17目標達成の折り返し点にある今日的状況を整理して論考した好著です。戦後の国際的な動きから日本国内での現実,そして2030年を見据えた未来までを時系列に則してわかりやすく解説しています。
 学校や企業研修,市民講座,自己啓発などでの取り組み,またファシリテーターとして活動するさまざまな人にとって,歴史や事実関係,関連法令などを整理しなおす際に是非とも手元に置いて役立てていただきたい。

著者プロフィール

田中 治彦  (タナカ ハルヒコ)  (著/文

1953年東京生まれ。
上智大学名誉教授,日本社会教育学会名誉会員,(認定NPO)開発教育協会監事,(学)東京YMCA 学院評議員,龍ケ崎市最上位計画策定審議会副会長。
(財)日本国際交流センター,岡山大学,立教大学,上智大学を歴任。
専門は,開発教育,生涯教育,SDGs 論。
著書に『SDGs と開発教育』『SDGs とまちづくり』『SDGs カリキュラムの創造』(以上,学文社),『グローバル時代の「開発」を考える』『18歳成人社会ハンドブック』(以上,明石書店),『成人式とは何か』(岩波書店),『SDGs と社会教育・生涯学習』(東洋館出版社),他多数。

上記内容は本書刊行時のものです。