アイシーメディックスの日々
版元ドットコム新入りのアイシーメディックスと申します。命名者(社長)によるとそれは、”International Communication Media Mix”というたいそうな意味が込められているのですが残念なことにほとんど知られてはおらず、今のところ単に薬品会社と間違われやすい社名になってしまっています。
余計な前置きをしてしまいましたが、入会させていただいたからにはただの教えて君にならないように頑張りますので、会員社や会友の皆さまをはじめ、当サイトを訪問してくださった全ての皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、アイシーメディックスは星雲社さんをとおして流通させてもらっている身の上です。聞いたところによれば星雲社経由の版元さんの中には2年に1冊くらいの超おそペース、しかも単なる道楽で本を出しているというところもあるそうです(それは版元さんと言わないのかもしれない)。そういう極めて雑多な600(社)ほどの星雲の中でひときわキラキラ輝く星がアイシーメディックスだと思うのですが……。
この状態について、出版業界外から最近やってきたばかりの私からすると、取次さんとのあれこれ面倒なやりとりをわずかな手数料で変わりにやってもらって、とても有難い感じがしています。同じく業界外から数年前に参入してきた社長と二人水入らずの会社ですので、直接取引きのデメリットよりメリットのほうが現状ではずっと大きいような気がします。
デメリットで思い当たることといえば、書店営業に行ったとき、「返品の逆送が多いんですよねーー」と言われることがたびたびあることくらいでしょうか。
——〈返品が逆送するって何??〉
と、その意味すらわからなかった私は早速星雲社に電話をかけ、「書店さんで返品が逆送するって言われるんですがどうしたらいいですか?」と尋ねました。すると、「基本的にそんなことはないはずなんですけどね。返品伝票に”版元の○○受け”など明記しておけば防げると思いますよ」との回答が。そこで書店さんにそう伝えると、「うーん、そうは言っても現実にはそうならないからねーー」と難しい顔をされました。この件は私の中でいまだ未解決です。
一方、社長の体験談を聞くと、星雲社経由版元であることで冷たくあしらわれたり鼻で笑われたような(気がしているだけかもしれない)ことがあるようです。しかし私は書店営業において冷たくされたことは一度しかなく、書店営業どころかまず営業というもの自体をしたことがなかったので、営業という仕事は(ましてや飛び込みしてる)いじめられたり追い返されたり、もっと涙に暮れる日々が待っているものと思っていただけに、やや拍子抜けの感がありました。
…と、まるで営業担当者のようなことを書いてしまいましたが、実際は担当書籍に関して各人がその誕生から死までを見届ける制度になっているだけなのです(会社が新しいため、みな乳飲み子—青少年くらいの本たちなのですが)。
しかしそのことが本作りというものに対して自らに責任を感じさせ、あれこれ無い知恵を絞ったり知らないことを調べたり版元ドットコムに入ってみたりする原動力となって、仕事を楽しくさせてくれているのです。前職ではある業界紙記者をし、下版までが仕事でした。それを思うと、やることのなんと幅広くなったことか。大筋を忘れると今日どの本のどの部分の何をやっているのか、自分を見失ってしまいそうです。
一つの会社として考えると、こういった形を何年もとっているなら大きくはなれないと思います。でも、小さい今のうちだからこそ、とりあえず何でもかんでも自分でやってみることができ、この状態を人生に例えるなら短く貴重な青春時代のようです。……と思っていたら『編集会議』4月号で”編集者も書店営業しよう!”とかいう特集をしていたので、〈なんだ、結構私は業界の時代の流れに乗れていたってことか…〉と、ちょっと嬉しくなってしまいました。
とにかくそのような出版活動をしていますので、担当本(=わが子)が売れなかった悲しみは、直接私(=母)の心を刺しとおします。
〈売れっ子になってほしい……〉
〈あの子は売れてるのに、なんでうちの子は……〉
〈この子はきっと大物になるに違いない!〉
子を育てる母のように、楽しく悶々とした毎日を送っているアイシーメディックスなのです。