コロナ禍から愛をこめて
渋谷のラブホテル街・円山町にあるマンションの一室に、弊社の編集部はある。
普段は若者で賑わい、欲望に満ちている。それが魅力的な街なだけに、コロナ禍は非常にさみしかった。人はいないし、ライブハウスや飲食店は閉店してしまうし、まるで活気がなくなってしまった。
ろくに店も営業できない5月、弊社は1冊の本作りをスタートさせることにした。
BiSHのメンバーであるモモコグミカンパニーの2冊目となるエッセイ集を出版するためにクラウドファンディングを始めたのだ。
https://camp-fire.jp/projects/view/265517?list=watched
このプロジェクトでは、支援してくれた方に毎週エッセイを1話ずつメルマガで送っていき、最終的に1冊の本にまとめて発送するという方法をとっている。読者にも、本への愛着をたくさん持ってほしいという気持ちから考えたものである。
最終的に、80日間の募集期間に4401名の方が支援をしてくれた。心からありがたいと思うと同時に、生半可な本は作れないというプレッシャーも感じている。
メルマガを受け取った読者は、エッセイに対する感想やコメントを専用のアドレス宛におくれるようにもしている。10話まで配信した今日の段階でも、数百通のコメントを送っていただいている。
どのコメントも強い想いがこもっていて、エッセイへのコメントだけでなく、自身の身に起こったことを書いてくれる人もいる。著者のモモコグミカンパニーも毎回全部読んでいて、本当に1対1でコミュニケーションをとっているような気持ちになってくる。それが本当に嬉しい。
この本は11月上旬にクラウドファンディング支援者の方へお届けした後、年末くらいに一般書店で発売する予定で進めている。
コロナ禍でなければ、このような手法での制作はすることはなかったかもしれない。そう思うと、2020年だからこそ生まれた、この時代に生きている読者と一緒に作った本になると確信している。プロジェクトに参加していない方も、コロナ禍を生きた一人としてぜひ手にとっていただけたらと切に願っている。