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育児をしながら、猫本ひとり出版社

こんにちは、猫の本専門出版「ねこねっこ」の本木と申します。猫に関する実用書を中心に発行する、いわゆる“ひとり出版社”です。

「いつか版元日誌に寄稿する機会があるのだろうか。あるとしたら、どんなことを書こうか」と想像を膨らませていた……にもかかわらず、いざ版元ドットコムさんからご依頼をいただいた頃は、オミクロン株の影響で息子が通う保育園の休園が続き、目の前のことをこなすだけで精一杯の日々でした。新刊の構成が思っていた通りに進まず焦り、春からの小学校の入学準備も控え、算数セット500パーツ以上に1枚1枚ピンセットを使ってお名前シールを貼り……。

後ろ髪引かれながらも一度は執筆をお断りしたのですが、状況をご理解いただき、締め切りを伸ばしてくださった版元ドットコムさん、ありがとうございます。葉桜が茂り始め、鯉のぼりが空を舞う季節、延期に延期を重ねた卒園式もようやく迎えることができました。コロナ禍の非日常は続きますが、ようやく少しの安堵です。

●フリーランスを経て、ねこねっこを立ち上げ

……と、前置きが長くなりましたが、そんなわけで、子供を育てながら版元を運営しています。

版元としては3年目、“猫専門”としての編集者の活動は会社員時代を含めて16年目です。ねこねっこを立ち上げたのは、息子が4歳の時でした。それまでは、出版社、制作会社で勤務し、出産後しばらくしてからフリーランスに。1冊丸ごと制作をお請けしたり、ライターとしての活動を続けていました。

女性編集者が出産後も仕事を続けるとなった場合、(当然ながら職場にもよりますが、自分の周辺では)おもに2択を迫られることが多いと感じています。職場の理解を得ながら勤務を続けるか(フルタイム・時短etc.)、フリーランス(契約・個人事業主etc.)として活動するか。前者を選択したくても、さまざまな理由で後者へ至った人もいます。私もそうでした。

働き方の融通がきいて育児との両立がしやすい点は、たしかに、フリーの利点だと実感もありました。ただし一方で、会議で企画を説明してその場で通せることもあった会社員時代よりも、「受け手」になることが増えていました。あらかじめテーマが決まった本や記事の構成と文章をお請けしたり、出版社へ持ち込んだ企画も社内での検討の結果を待ったり。

制約がある中での試行錯誤もやりがいがあって好きなのですが、それと同時に、もう一歩発信側として主体的に人と猫の共生に関わる出版活動もしたい想いがあり、結果として辿り着いたのが、「自力で出版社」でした(*細かな経緯は、アニマルドネーションさんが書いてくださった記事へ)。直接的なきっかけは夫の「you やっちゃいなよ」の一言でしたが、「いやいや、何言ってる……ん?それ、ありなのでは?」と。すぐに版元の立ち上げを決めて、書店さんとの取引代行をトランスビューさんにお願いしました。

●育児と編集業を両立させる一つの形…なのか?

この方針が、現代の猫たちと飼い主さんの暮らしに必要な本を届けたいという目標に非常にマッチしました。依頼通りのスケジュール内で何とか作り上げるのではなく、膨大な調べ物を経て、監修者の専門家や制作関係者とともに、1冊1冊を丁寧に仕上げることができるようになりました(1冊に時間をかけ過ぎてしまうジレンマもありますが)。

出版社の形態にしてよかった点は、他にもたくさんあります。(かわいい・癒されるがゴールの本づくりではないだけに)“出版社ウケするか”を気にする必要がなくなったこと。企画と同時に制作をスタートできること。S N S等をご覧いただいて本を置きたいと思ってくださった書店さん、ショップや猫カフェ、動物病院etc.の方からの直接のご相談にもすぐに応対できること。猫イベント等で読者さんと直接コミュニケーションが取れること。書籍の売り上げの一部を動物福祉団体への寄付に回すといった選択もしやすいこと……などなど。

もちろん運営上の苦労も多々ありますし、すべての判断をしなければならない怖さもあります。脳内では、版元の自分と編集者の自分が、いつも穏やかに言い争っています。最初の書籍を刊行した頃には新型コロナウイルスの上陸が重なり、今後を見据えて移住もしました。……なので、出版社の立ち上げを安易にはおすすめできないのですが、(育児の話に戻って)「子供の成長を見守りながら編集業を続けたい」+「作っていきたい本の構想が見えている」が合わさった時、版元を立ち上げるというのも、選択肢の一つとしてあってもいいのかな、とは思っています(3年目の現時点の感想です)。

今朝は、新1年生の小さな体には重たすぎる週明けの荷物&GIGAスクール構想のもと配布されたタブレットPCを運ぶため、一緒に登校しました。その帰り道で、近所の子に「自転車の練習するから見て〜」と頼まれて業務の開始が遅れました。が、まぁ、誰にも怒られません。登校を見守ってくれるボランティアさんと会話したり、放課後の小学生に突然ドッチボールを挑まれる日もあれば、雪の日に一緒に雪うさぎをつくったり、天気が良い日に凧を飛ばしたり。コロナに振り回されっぱなしで苦しさもありますが、日々の小さな出来事を潤いとして楽しんでいます。

書ききれず端折ったことも多いので、育児中の編集者の方達と、どこかで雑談できたらいいなとも思っています。深い時間に帰宅していた日々が嘘のように、夜間に出歩くことはめっきり減ってしまいましたが、美味しい珈琲を飲んで一息つきながらでも。

《ねこねっこの本 ラインナップ》

猫からのおねがい 〜猫も人も幸せになれる迎え方&暮らし』(2020年)

猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑 〜誤食と中毒からあなたの猫を守るために』(2021年)

猫の「がん」 〜正しく知って、向き合う』 (2021年)

《ねこねっこの本 お取り引きについて》

●おもに書店様
トランスビューさんの取引代行
インターネットでのご発注(Bookcellar・トランスビューさんから発送)

●おもに小売店様(ショップ、猫カフェ、動物病院などの方)
ねこねっことの直取引
・卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」

ねこねっこの本の一覧

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