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戦後社会教育の原点:IFEL(教育指導者講習) 田中 治彦(著者) - 人言洞
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戦後社会教育の原点:IFEL(教育指導者講習) (センゴシャカイキョウイク ノ ゲンテン アイフェル キョウイクシドウシャコウシュウ)

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発行:人言洞
A5判
縦216mm 横151mm 厚さ15mm
重さ 325g
108ページ
上製
価格 3,000 円+税   3,300 円(税込)
ISBN
978-4-910917-21-4   COPY
ISBN 13
9784910917214   COPY
ISBN 10h
4-910917-21-7   COPY
ISBN 10
4910917217   COPY
出版者記号
910917   COPY
Cコード
C3037  
3:専門 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2026年10月5日
書店発売日
登録日
2026年8月9日
最終更新日
2026年10月4日
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紹介

 IFEL(教育指導者講習)は、終戦以降の日本における社会教育の発展を企図し日本社会教育学会や中央青少年団体連絡協議会の結成へとつながっていく、まさに戦後社会教育の原点といえます。IFELで培われた組織や制度・人脈はもとより、このとき導入されたグループワークは現在に至ってもワークショップやファシリテーションの技法として発展し、生涯学習の分野で大きな影響を及ぼしています。
 本書は、アメリカの情報公開による『GHQ/SCAP 資料』や、散逸して研究が困難であったIFEL関係史料(開催校の東京大学・お茶の水女子大学・東北大学・京都大学、受講側の日本青年館・日本YMCA 同盟・日本ボーイスカウト連盟)などの文献・講義録など著者による丹念な調査を撰修した希少な研究成果です。
 社会教育・生涯学習に携わるすべての研究者及び関係者らの定本となる一冊として、是非ともお手元に置かれることをお薦めします。
 

目次

序 章 IFEL・青少年指導者講習会研究の意義 
 1 IFEL とは
 2 研究の目的
 3 研究の方法
 4 本書の構成
第1章 占領期の社会教育政策におけるIFELの位置
 1 敗戦直後の教育政策
 2 「米国教育使節団報告」
 3 社会教育法の制定
第2章 IFEL実施当時の各青少年団体の状況
 1 戦前の青少年団体
 2 YMCA とYWCA
 3 スカウト諸団体
 4 青少年赤十字
 5 日本青年館と青年団
 6 ユースホステル
第3章 IFEL・青少年指導者講習会の企画と実施
 1 IFEL 実施の経緯
 2 IFEL の企画準備
 3 第Ⅰ期IFEL の実施
 4 第Ⅲ~Ⅳ期IFEL の実施
 5 第Ⅴ期IFEL の実施
第4章 青少年指導者講習会とグループワーク理論
 1 IFEL におけるグループワーク理論
 2 YMCA・ボーイスカウトとグループワーク理論
 3 青年団とグループワーク
第5章 IFEL・青少年指導者講習会の成果と影響
 1 日米人事交流計画
 2 青少年指導顧問制度
 3 社会教育主事制度
 4 中央青少年団体連絡協議会
 5 日本社会教育学会
第6章 IFEL・青少年指導者講習会とは何であったか?
 1 IFEL・青少年指導者講習会の位置と意義
 2 IFEL 研究の今後の課題
附属資料
 1 IFEL(教育指導者講習)の概要
 2 IFEL・青少年指導者講習会の概要
 3 IFEL・青少年指導者講習会に関する通達
 4 昭和23年10月4日~15日 青少年指導者講習会議事録(抄)
 5 青少年指導顧問制度職務規程
 6 IFEL関係文献目録
 7 『GHQ/SCAP資料』の中の青少年関係資料一覧
 8 IFEL関係年表
 9 ABSTRACT

前書きなど

はじめに
 IFEL(教育指導者講習)は1948(昭和23)年から1952(昭和27)年にかけて8期にわたって開催された。その内,青少年指導者講習会は1948,1949,1950年度に4回開催された。IFEL の青少年指導者講習会は,戦後の日本の社会教育に決定的な影響を与えた。1930~40年代の軍国主義下での青少年活動によって,ほとんどの青少年指導者が新しい民主主義の時代の青少年活動をいかに推進するかという点でアイデアを持ち合わせていなかった。IFEL で導入されたグループワークの理論と手法とによって,当時の青少年指導者は民主的な討議法と団体運営法を初めて学び,理解することになる。
 グループワークの手法は欧米に起源をもつYMCA やボーイスカウトの指導者にとっては比較的容易に受け入れることができた。しかし,日本の土着の青少年団体である青年団にとってそれを理解することは困難であった。青年団は江戸時代の若者組にルーツをもち,同じ村落に住むすべての青年が自動的に団員となっていた。グループワークでは,そもそも地域網羅的な団体は全体主義の温床であるとして,その組織原理自体を否定していた。青年団はほぼすべての集落にあり団員数は多かったが,活動自体は伝統的なものであり,祭りの運営や消防団などの役割を担っていた。青年団は,戦時中は大日本青少年団の構成員として,若者の軍事教育を行っていた。したがって,GHQ の最初の仕事は,軍国的な青少年団体を解散させ,民主的な団体に作り変えることであった。青年団はIFEL を通して,地域網羅組織ではなく,興味関心に基づく団体に再編されるが,それは失敗に終わる。青年団はグループワークを批判的に受容するなかで,独自に共同学習論を生み出し,実践に移す。共同学習論は話し合い学習の中から,自身や地域の課題解決を行うための方法論として定着した。
 IFEL で行われた社会教育関連の講習会は,青少年指導が4回,図書館教育が3回,成人教育,通信教育,公開講座が各2回である。戦後の社会教育にとって青少年教育の占める比重が高かったことがわかる。IFEL の参加者の中から,多くが青少年指導顧問制度を経て,各地の社会教育主事として活躍する。IFEL で培った社会教育関係者の人脈は,日本の社会教育の発展を支えてきた日本社会教育学会や中央青少年団体連絡協議会の結成へとつながっていく。まさにIFEL は戦後社会教育の原点といっても過言ではないだろう。このように重要な講習会であるにもかかわらず,従来IFEL 研究は十分深められてはこなかった。その主な理由はIFEL 関係の史料が散逸していて研究が困難であったことにある。しかし,1980年代になりアメリカの情報公開により『GHQ/SCAP 資料』が日本の国立国会図書館でも閲覧可能になった。
 本書はそれらの資料を丹念に調べるとともに,IFEL 開催校であった東京大学,お茶の水女子大学,東北大学,京都大学,そして受講側であった日本青年館,日本YMCA 同盟,日本ボーイスカウト連盟などにおいて文献調査,ならびに講義録など関連資料の調査を行った。1999年には高橋寛人編『占領期教育指導者講習(IFEL)基本資料集成』が発刊されて,基本資料へのアクセスが容易になった。
 IFEL で導入されたグループワークは,現在に至ってもワークショップやファシリテーションの技法として発展し,生涯学習の分野で大きな影響を及ぼしている。本書や関連の文献をもとに,今後IFEL 研究が一層進展するように期待するものである。

あとがき
 筆者がIFEL に最初に注目したのは,1980年代に青少年教育の歴史研究を行っている過程であった。1986年に岡山大学に赴任し,日本の青少年団体の歴史について調べることになった。ボーイスカウト,YMCA など青少年団体の多くは自身の歴史をまとめて冊子にしていたが,地域子ども会には通史がなく,各地域ごとに調べる必要性があった。各地に出張する度に,県立,市立,大学図書館を回り,各地の子ども会などの青少年活動の歴史を調べた。全県制覇とはいかなかったが,最終的に30数県の子ども会について調査を行うことができた。これらの成果をもとに1988年に『学校外教育論』(学陽書房)として,日本の青少年活動の歴史をまとめて掲載した。日本で初めての青少年教育の通史であった。
 その過程で,これらの青少年団体がすべてグループワークの方法論に依拠していることが判明した。そのグループワークは,戦後の占領期にSCAP/GHQによってもたらされたものであり,IFEL という名の講習会によって伝授されていた。IFEL については研究がほとんどなく,その資料も散逸していて調査は困難であった。そこで文部省の科研に応募して,散逸している資料を収集し青少年指導者講習会の全貌を明らかにすることを申し出たところ,幸いにも採択された。1991~1992年度にかけてIFEL の実施校である東京大学,お茶の水女子大学,東北大学,京都大学,九州大学を調査して回った。大学によってはIFEL の資料が整理されておらず,筆者の訪問によってその存在が明らかになったところもある。また実施機関であった国立教育政策研究所,受講側であった日本YMCA 同盟,日本青年館,日本ボーイスカウト連盟などにもお世話になった。何より,アメリカの情報公開により,国立国会図書館憲政資料室に膨大な『GHQ/SCAP 資料』がマイクロフィルムとして保存されていて,それらを丹念に調べることでようやくIFEL の全貌をつかむことができた。
 科研の調査は1993年に『青少年指導者講習会(IFEL)とその影響に関する総合的研究』(課題番号03610126)としてまとめられ,その大部分が翌年,岡山大学教育学部研究収録に2回にわたって掲載された。その後,グループワークの起源であるイギリスのユースサービス研究などを行い,最終的には2015年に『ユースワーク・青少年教育の歴史』として東洋館出版社より発刊された。筆者のライフワークである。その後,2018年に上智大学を定年退職し,2022年70歳を機に非常勤講師も終了した。時間ができたので,現職中に多忙でできなかった仕事を完了させることにした。ひとつは東洋館出版社の本の英語版である。じつは,日本の青少年教育史については1990年にイギリスのサンダーランド大学に留学したときに,『学校外教育論』の論文の英訳を試みていた。その後,サンダーランド大学の教授の助力でイギリスでの出版の話もあったのだが,論文がほぼ完成したところでその教授が急逝し,出版の話は頓挫していた。イギリスでの出版は無理でも,原稿の内容を3回に分けて『上智大学教育学論集』(56-58号)に掲載した。タイトルは「History of Youth Work and Social Educationin Japan」である。同論集はネット上にもあるので,世界中からアクセス可能である。
 もうひとつ残された課題がこのIFEL 研究であった。研究の成果は科研報告書と岡山大学教育学部研究集録に発表されてはいるが,それらを入手することは非常に困難である。翻ってその後のIFEL 研究を見ると,1999年には高橋寛人により『IFEL 基本資料集成』全3巻が刊行され,また社会教育関係でも二つの論文が書かれていた。とはいうものの,IFEL 研究の進展は遅々としていた。そこで,その後の研究成果も加えてIFEL・青少年指導者講習会についての本書を著わすことにした次第である。本書を機に,今後IFEL 研究がさらに進展することを祈念するものである。

版元から一言

 研究職のはじめから青少年教育を専門領域とする著者が、長年にわたり探究を続けてきた研究成果のひとつの節目として上梓した渾身の書です。社会教育・生涯学習に携わるすべての研究者及び関係者等の定本となる1冊としておさえておくことをお薦めします。

著者プロフィール

田中 治彦  (タナカ ハルヒコ)  (著者)

1953年東京生まれ。上智大学名誉教授,日本社会教育学会名誉会員,(認定NPO)開発教育協会顧問,(学)東京YMCA 学院評議員,龍ケ崎市最上位計画策定審議会副会長。(財)日本国際交流センター,岡山大学,立教大学,上智大学を歴任。YouTube「田中治彦のグローカルセミナー」主宰。専門は,開発教育,生涯教育,SDGs 論。
著書に『新SDGs 論』(人言洞),『SDGs と開発教育』『SDGs とまちづくり』『SDGs カリキュラムの創造』(以上,学文社),『グローバル時代の「開発」を考える』『18歳成人社会ハンドブック』(以上,明石書店),『成人式とは何か』(岩波書店),『ユースワーク・青少年教育の歴史』(東洋館出版社),『ボーイスカウト』(中央公論社)他多数。

上記内容は本書刊行時のものです。