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長屋王の変とは何か
律令が生んだ悲劇
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2025年6月18日
- 登録日
- 2025年2月19日
- 最終更新日
- 2025年6月17日
紹介
「太子信仰」が生まれたのは、なぜか。
律(刑法)を定めた者の違法、「冤罪」の原点を紐解く。
封印された権力による謀略を、民衆がどのように記憶に刻み、伝承したのか、
その過程を明らかにする。
目次
第一章 歴史の闇に沈んだ王の影
第一節 佐保邸跡に造られた聖武陵/第二節「市中の山居」の佐保邸/第三節 帰国僧・道慈の役割/第四節 なぜ光背銘文は書かれたか/第五節 正史は法隆寺に軽かった/第六節 「怒」から柔和・静穏の相へ/第七節 タリシヒコは聖徳太子に非ず
第二章 遺構が語りだした実相
第一節 佐保邸の高楼が夢殿に/第二節 菰川舟運は可能だったか/第三節 旧長屋本邸が皇后宮に
第三章 法(律)はどう長屋を裁いたか
第一節 律令布いて律令国家に非ず/第二節 正倉院文書に現れる不比等
第四章 長屋王・吉備内親王ここに眠る
終 章 改めて〝変〟、多治比、道慈のこと
前書きなど
〈長屋への関心は近代の大冤罪事件、幸徳秋水らの件からだった。古代については仏像趣味であった身が、同種の事件が遥か過去にあったことに気づいてしまったことによる。千三百年も前のことを持ち出すのに違和感はあるかと思う。だが、封印・抹消は脈々といまに続く。公権力の謀略による究極の不法が許されないのは、いつの世でも変わらないはず。法治を立ち上げた瞬間、非法・無法が闡明化するのはパラドックスだが、そのパラドックスこそ究明し正され続けなければならない。このとき「大逆」の語が鋭く社会に突き刺さった。メディア(新聞)の責も大だった。真相究明どころか、怯えを喚起するその語が、萎縮の思考停止を齎(もたら)した。ここで「左道」が脳裏を過(よ)ぎるようになった。
かの時代を総体的奴隷制とする史観に立てば、その人物は奴隷主に違いない。ただ、階級支配の頂点に位置する人間はどういう殺され方をしてもいいという考えはわたしにはない。冤罪による殺人は許されぬという点で、二つの事件はわたしにとってイーコールなのである。無念の霊は今日に至るまでどれだけあることか。いま現在そうある人々もいる。長屋・幸徳にこだわるなかで、ささやかながらの思いを致したかった。〉(「余題」より)
上記内容は本書刊行時のものです。