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なぜ福島の甲状腺がんは増え続けるのか?
UNSCEAR報告書の問題点と被ばくの深刻な現実
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2024年5月24日
- 登録日
- 2024年5月13日
- 最終更新日
- 2024年5月17日
紹介
福島原発事故後、多発する甲状腺がん。日本政府は、「原発事故の影 響とは考えにくい」と言い続けている。第Ⅰ部では、政府が依拠する UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の報告が、被ばくを過小評価するものであり誤りであることを、科学的に明らかにする。第II部では、福島の今なお高い被ばく線量や、避難者の健康状態のレポー ト。第III部では、放射線被ばくの強制は、基本的人権を侵すものだと論じる。
目次
第I部 福島原発事故による被ばくと甲状腺がん
1 福島原発事故による被ばくに関するUNSCEAR推定値と1,080名実測値および低線量被ばくについての考察(本行忠志)
2 みんなで知ろう簡単解説「福島甲状腺がんは原発事故による被ばくが原因」(加藤聡子)
3 論文解説:福島の小児甲状腺がんとUNSCEAR甲状腺線量との間の地域線量反応と被ばく起源(加藤聡子)
4 UNSCEAR議長への手紙とその返信(田口茂)
5 小児甲状腺がん多発の原因は福島原発事故(大倉弘之)
第II部 福島の声、避難者の声
1 避難指示解除が進む地域の現状 マスメディアでは報道されない高放射線量が続いている(飛田晋秀)
2 福島第一原子力発電所爆発事故による低線量被ばくリスクの体現(福島敦子)
3 被ばくによる健康被害と向きあって(るる)
第III部 放射線被ばくを避けることは基本的人権である
1 ICRP Publication 146批判(山田耕作)
2 トリチウムを含む福島原発放射性廃液の海洋放出に反対する(山田耕作)
前書きなど
まえがき
2024年3月で福島原発事故から13年がすぎた。「明らかにする会」は、小児甲状腺がんの多発の原因が福島原発事故により放出された放射性物質による被ばくにある事実をこれまで、3度にわたるブックレットの出版や学習講演会などの開催を通じて明らかにしてきた。被ばくによるとする根拠は、学術論文やブログ等を通じて公開している。例えば、福島原発事故の被ばく量を推定しているUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の誤りをただし、原発事故避難者の訴訟においては原発賠償関西訴訟本行忠志専門家証言などによって政府・東電側の主張を、論文をめぐる福島県立医大との論争においても科学的な論拠で圧倒してきた。しかし、残念ながら、その成果を社会に広く十分伝えるのに成功しているとはまだいいがたい。そこで、真実の探究と共有のために第4ブックレットを世に問う。
本ブックレットは3部構成となっており、第I部では、福島原発事故による被ばくと多発している甲状腺がんについて考察しており、全体を通じて、政府側が甲状腺がんの原因を否定する根拠としている
「被ばく量が非常に少なかった」がまったくの誤りである事実を理解していただければ幸いである。
本行忠志論考は、UNSCEARの過小評価と間違いを詳しく具体的に説明しており、その上、低線量被ばくも危険であることを最近の科学的知見を加えて解説している。
加藤聡子は、甲状腺被ばく線量に比例して小児甲状腺がんが発生している事実を明瞭に示している。この甲状腺被ばく線量と小児甲状腺がんの発生率の相関は福島県立医大やUNSCEARによって頑なに否定され、被ばくと健康破壊の間に関係がないとする論拠とされてきた。しかし、正しく解析すれば、福島県立医大の論文にあるデータを用いて発生率と被ばく線量は驚くべきほどの比例関係を示す。被ばくと甲状腺がん多発とに因果関係ありとするこの相関は、福島県立医大がデータをいかに誤用しているかを示すものでもある。
田口茂は、UNSCEAR議長との手紙のやり取りを報告、大倉弘之は、がん統計等から福島の甲状腺がんの原因を考察している。
第II部は、福島の深刻な現状を伝える。飛田晋秀写真レポートは、避難指示解除が進む福島県内の各地の被ばく線量を実測し、深刻な汚染が続いているのを数値でもって明らかにしている。毎時5から10μSvを超える空間線量の汚染が各地にあり、これは、年間にすると50から100mSvの被ばくに相当する。これほどの高線量下での住民の暮らしを「復興」だとしてと喜べるのだろうか。
福島敦子と避難者「るる」は、自らの避難の経験、健康被害の体験を語る。命と健康を守るという基本的人権が政府・東電によって踏みにじられている現実に怒りを抑えることができない。医療保障の継続・拡大が緊急の課題である。広島・長崎の黒い雨と同様、UNSCEAR推定値よりも桁違いに大量の放射性微粒子が東北・関東の住民多数を襲った。この放射性微粒子による内部被ばくはがんのみならず、多様な健康破壊を引き起こし始めている。原発事故による被ばくの可能性のあるすべての人に健康手帳の交付が必要である。そのための署名運動も展開されている。
第III部では、放射線被ばくの強制が基本的人権に反している問題をICRP勧告(Publication146)やトリチウムほか放射性核種を含むALPS処理汚染水海洋放出(投棄)事例をとりあげ、山田耕作が批判的に考察している。
以上から、このブックレットが被災者、避難者の権利回復の運動の発展にお役に立てることを願う。
2024年3月31日
執筆者一同
上記内容は本書刊行時のものです。