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闘って正社員になった
東リ偽装請負争議6年の軌跡
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年11月1日
- 書店発売日
- 2023年10月31日
- 登録日
- 2023年10月17日
- 最終更新日
- 2023年10月23日
紹介
偽装請負を告発し、2012年改正派遣法の「労働契約申込みみなし制度」で、 派遣先での組合員全員の直接雇用・正社員化を勝ち取った東リ偽装請負争議。 労働組合こそが働く者の権利を守る拠り所であることを示したその闘いの意義を、組合員、弁護団、支援者らで振り返る。誰でも組合をつくって闘える! 中間搾取と差別雇用を放置してはならない!
目次
はじめに (田中充郎)
略年表
第1部 組合を結成して派遣先に直接雇用を求める
東リ伊丹工場での偽装請負の実態 (村田浩治/大西克彦)
組合結成・偽装請負告発から、全員職場復帰・直接雇用・正社員化まで (有田昌弘)
判決確定から職場復帰まで一年近くかかった交渉
第2部 法律闘争の取り組みとその成果 (村田浩治/大西克彦)
兵庫労働局に対する偽装請負認定とみなし規定による是正指導を求める闘い
兵庫県労働委員会に対する不当労働行為救済を求める闘い
東リとの労働契約関係の確認を求める闘い (裁判)
あとがき (村田浩治)
組合員座談会 争議を振り返って
東リ偽装請負争議完全勝利おめでとうございます! (大橋直人)
前書きなど
(「はじめに」後半部分)
■東リ偽装請負事件の概要
東リ株式会社は、その伊丹工場(兵庫県伊丹市)において、主力製品である巾木(床と壁の繋ぎ目に使用される建材)を製造する巾木工程と、接着剤を製造する化成品工程で、1990年代後半頃から原告ら労働者を偽装請負で就労させてきた。
2015年夏に原告ら労働者はパワハラを続ける偽装請負会社L社社長の解雇・パワハラ攻撃に対抗するため労働組合を結成した。弁護士に相談する中で彼らの就労状態が偽装請負であることを知っていく。2017年3月、組合員のうち執行部を中心に一部有志(原告ら)が先行して「労働契約申込みみなし制度」に基づく承諾通知を東リに送付し、同社に対して直接雇用に関する団体交渉を申し入れた。2017年3月、東リは、当時同社に原告ら労働者を供給していた偽装請負会社L社に見切りをつけ、新しく用意した派遣会社S社に原告ら労働者の雇用を引き継がせる手続き中であった。この移籍の過程で、S社が組合員だけを採用拒否するという事件が起きた。3月下旬、S社から各労働者に最終的な採用通知が送られる直前に、東リへ承諾通知を送った組合の中心メンバー5人を残して、16人いた組合員のうち11人が一斉に脱退した。そして、もともとの非組合員及び組合脱退者は全員がS社から採用通知を受ける一方、組合に残った5人は全員が不採用通知を受けた。かくして、偽装請負という不正義を糺すため行動をした原告ら5名は、その故をもって2017年3月末に東リ伊丹工場から放逐されたのである。
原告らは、2017年11月21日、東リに対し派遣法第条の6に基づく地位確認等を請求する訴訟を神戸地方裁判所に提起した。しかし神戸地裁は、2020年3月13日、原告らの就労実態は偽装請負ではなかったなどとして請求棄却の不当判決を言い渡した。
原告らは直ちに控訴し、控訴審では異例の証人調べを経て、2021年11月4日、大阪高等裁判所は、1審神戸地裁の誤りを正して1審判決を取り消しすべての原告について東リとの労働契約関係を認めた。
大阪高等裁判所の判決から7ヶ月経った2022年6月7日、最高裁判所が上告棄却、上告審として不受理を決定し大阪高裁判決を確定させた。これは不安定な立場で5年にもわたる裁判を余儀なくされた労働者の雇用の安定に資するものであり、大阪高等裁判所の示した偽装請負に対する判断を支持したことを示すものであった。
しかし東リは判決確定を真摯に受け止めることなく、5人の就労を拒否し続けた。しかし5人と支援者たちは団結して闘い、団体交渉を継続し金銭解決を明確に拒否する中で、2023年3月27日からの正社員としての就労を勝ち取った。
■不当な働かせ方をなくし、人間らしい労働を
東リ偽装請負争議の勝利は、「労働契約申込みみなし制度」(派遣法第40条の6)を使って裁判闘争を経て正社員となった初の事例である。これを単なる一つの事件の結果に留めず、社会全体に大きな影響力を持たせる必要がある。いまも日本の製造業には偽装請負が蔓延している。この勝利を次のステップへとつなげ、より公正で人間らしい労働の実現に向けて共に闘い続ける決意を新たにしたいと思う。そのために本書が一助となることを願うものである。
2023年9月
編者を代表して 田中充郎
上記内容は本書刊行時のものです。