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ウクライナ・ショック 覚醒したヨーロッパの行方 三好範英(著/文) - 草思社
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ウクライナ・ショック 覚醒したヨーロッパの行方 (ウクライナショック カクセイシタヨーロッパノユクエ)

社会科学
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発行:草思社
四六判
312ページ
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-7942-2622-8   COPY
ISBN 13
9784794226228   COPY
ISBN 10h
4-7942-2622-5   COPY
ISBN 10
4794226225   COPY
出版者記号
7942   COPY
Cコード
C0031  
0:一般 0:単行本 31:政治-含む国防軍事
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2022年12月29日
書店発売日
登録日
2022年11月30日
最終更新日
2022年12月1日
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書評掲載情報

2023-02-11 日本経済新聞  朝刊
2023-01-29 産經新聞  朝刊
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紹介

本書は2022年2月24日に起こった「ウクライナ侵略」の背景を描き、その原因や影響を考察したノンフィクションである。著者は読売新聞のべルリン特派員を10年近くつとめ(現在はフリー)、『ドイツリスク』(光文社新書)で山本七平賞を受賞しているドイツ通のジャーナリストである。

今回、戦闘地そのものには取材できなかったがウクライナ西部の国境の街リヴィウや隣国ポーランドなどを著者は実際に訪れて取材している。また過去に何度もウクライナに取材したことがあり、とくにクリミア併合のあとの2015年にドンバス地方の内戦地で義勇軍の取材をしている。

この戦争により理想主義で夢見がちだったドイツが覚醒し、大胆に政策転換したことに著者はまず驚いている。ドイツ内部にあったロシアの民主化への甘い期待は裏切られ、経済的なつながりが平和を生み出すと考えられたメルケルにいたる戦後の融和策は抑止策へと変化した。

またそれに増してポーランドやバルト三国、北欧の2国などの抱える歴史的な恐怖心はすさまじい。ウクライナも含めて、第二次大戦でのナチドイツと共産主義ソ連の戦いに翻弄された過去がこの戦争には色濃く反映している。このあたりの各国の微妙な立ち位置を描く著者の分析は見事である。

つまるところポストモダンな西欧のリベラリズム(環境主義、エネルギー問題、過激な文化運動、移民政策など)が社会に分断を生み出し、ロシアに侵略の口実を与えたというのが著者の指摘の一つでもある。

最終章で著者は日本は明日のウクライナかドイツかポーランドかと問いかけている。
日本も覚醒せよということなのかもしれない。

目次

序章 日本に問われているもの

ウクライナで拘束される
平穏に伏在する緊張
国民は日々強くなっている
「野蛮」から「文明」へ
日本が防衛すべき国際秩序
国のために死ねるか
実感主義と相対主義
人命を超えた価値
一巡して出発点に
前進を見たリベラルな秩序
自由と民主主義の後退

第1章 「平和主義」をかなぐり捨てたドイツ
 Ⅰ「抑止」理念が復活した
歴史的転換を遂げた安保政策
ポストモダンは幻だった
ウクライナ侵略は植民地主義的
「平和ボケ」だった政治家たち
東西冷戦の最前線だった西ドイツ
 Ⅱ統一ドイツで傾いたバランス
「ミュンヘンの教訓」と「ベルリンの教訓」
「普通の国」か「文民国家」か
初めて友好国に囲まれた
「ためらう覇権国」は通用しない
日本より常識的な議論
自国を客観視した論文
現実主義の復権を
 Ⅲロシアとの特別な関係
ドイツがロシアを作った
バルト貴族から反合理主義まで
野合するドイツとロシア
プーチンの下院演説
メルケルは警戒的だったが
歴代ドイツ指導者はロシアの共犯者か
シュレーダーの反米傾向
ウクライナに拒否された大統領
ノルトストリーム2を推進したメルケル
 Ⅳ平和主義はどこへ
緑の党が重火器支援の最右翼
アウシュヴィッツを繰り返さない
伝統的な平和主義のSPD
エネルギー安保に覚醒
冬場に凍え死ぬ恐れ
原発稼働延長をめぐり与党分裂
変幻自在のドイツ人

第2章 ロシアの恐ろしさを熟知するポーランド
 Ⅰ避難民支援の最前線
ウクライナ国旗が至る所に
住居の斡旋ボランティア
NATO close the sky!
冷雨の国境の町へ
似通った食事や習慣
身近にいたウクライナ人
 Ⅱウクライナを守ることはポーランドを守ること
複雑な両国関係史
住民虐殺というトゲ
最大の軍事支援拠点に
ロシアは変わっていない
戦えるNATO部隊を望む
ドイツの政治思想は破綻した
ドイツへの「何を偉そうに」の感情
侵略きっかけに国民統合へ
ゼレンスキー政権はネオナチではない
余念なきエネルギー安保

第3章 「歴史戦争」を戦うウクライナ
 Ⅰドンバス地方で見た侵略の予兆
ロシアと一体か、別の国か
困難なアイデンティティ形成
義勇兵の訓練キャンプ
引き倒されたレーニン像
 Ⅱ東漸する最前線
「解放」史観の否定
遅れてやってきた記念碑撤去
先行していた東欧・バルト諸国
「正史」に一元化されるロシア史
赤軍兵士像撤去で暴動
ウクライナに到達した歴史の清算
ロシアのプロパガンダに対抗
 Ⅲ東西の両面作戦
共産体制清算のジレンマ
侵略を歴史で正当化するプーチン
歴史認識に変化を生むか
他国の規範にはできない
ロシアの深層心理と文化抹殺

第4章 ロシアはヨーロッパの敵国となった
 Ⅰ北欧の大変動
200年の中立放棄
「フィンランド化」で自由を守る
周縁的だった北欧安保
NATOへの完全加盟で安全保障
核威嚇で考え方が変わる
「冬戦争」とウクライナ侵略
ロシアの戦争の仕方は変わらない
「フィンランド化」が選択肢
東方拡大が侵略を招いたのか
プーチンの主張には無理がある
Ⅱ再構築迫られるNATO
安倍元首相が貢献した関係強化
新「戦略概念」で領域防衛が復活
東部戦力の抜本的強化
「核同盟」であり続ける
森の奥に戦術核格納庫
分解寸前だったNATO
何が脅威かでばらばら
古層の亀裂が拡大
ヨーロッパは結束を保てるか

第5章 不可分な日本とヨーロッパの安全保障
東京湾にドイツフリゲート艦
蜜月から徐々に脅威に
日本発の「自由で開かれたインド太平洋」
フランスが先陣を切る
中国に忖度するドイツの軍艦派遣
インド太平洋に集団安全保障
ベルリンに居座る慰安婦像
屈折したドイツ知識人の意識
EUも対中姿勢に厳しさ
台湾重視が広がる
民主主義vs権威主義
ウクライナ侵略とインド太平洋
英仏中心の安全保障関与

終 章 ウクライナ侵略後の世界
金星から火星の住人へ
揺るがないドイツ
なぜ侵略は起こったか
似通ったユーゴ解体の歴史
大陸国家vs海洋国家
リベラリズムへの敵意
世界史の極悪人
戦争終結のシナリオ
中国主導のユーラシア大陸秩序か

あとがき

著者プロフィール

三好範英  (ミヨシ ノリヒデ)  (著/文

三好 範英(みよし・のりひで)
1959年生まれ。東京大学教養学科卒。読売新聞バンコク、プノンペン、ベルリン特派員、編集委員を経て、現在フリーランスのジャーナリスト。著書に『特派員報告カンボジアPKO』(亜紀書房)、『戦後の「タブー」を清算するドイツ』(同)、『蘇る「国家」と「歴史」』(芙蓉書房出版)、『メルケルと右傾化するドイツ』(光文社)、『本音化するヨーロッパ』(幻冬舎)。『ドイツリスク』(光文社)で山本七平賞特別賞受賞。編著に外交官岡崎久彦氏の回想録『国際情勢判断・半世紀』(育鵬社)、同加藤良三氏の回想録『日米の絆』(吉田書店)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。