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なぜ賃金は上がらないのか 日本経済30年の陥穽 首藤 若菜(著) - 講談社
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なぜ賃金は上がらないのか 日本経済30年の陥穽 (ナゼチンギンハアガラナイノカ ニホンケイザイサンジュウネンノカンセイ)

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発行:講談社
新書判
224ページ
定価 1,000 円+税   1,100 円(税込)
ISBN
978-4-06-544358-3   COPY
ISBN 13
9784065443583   COPY
ISBN 10h
4-06-544358-X   COPY
ISBN 10
406544358X   COPY
出版者記号
06   COPY
Cコード
C0233  
0:一般 2:新書 33:経済・財政・統計
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2026年5月14日
最終更新日
2026年6月29日
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書評掲載情報

2026-08-01 日本経済新聞  朝刊
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紹介

食品から日用品まで、何もかも驚くほど高くなった。
スーパーで目にする野菜の値段が少しずつ上がっているなと思っていたら、「令和のコメ騒動」が起き、同じ価格でも内容量を減らす「ステルス値上げ」が普通になった。
長く続いたデフレの時代が終わり、生活必需品の値上がりが、暮らしを直撃している。
その分賃金などの収入が上がっていればいいのだが、一向にその実感はない。賃金の上昇率から物価の上昇分を引いた「実質賃金」は4年近くもマイナスが続いていることが示すように、その実感は、統計にもはっきり表れている。
物価上昇のしわ寄せが、暮らしを直撃しているのだ。
いったいなぜこんなことになってしまったのか。
急激な円安によって輸入品やエネルギー価格が上がったためなのか。
企業が値上げで儲かった分を労働者に還元せず、「内部留保」として貯めこんでいるためか。
日本人の働き方は効率が悪く、「労働生産性」が低いためか。
各企業の労働組合の交渉力が弱く、大企業の言うがままになってしまっているのか。
本書では、こうした俗説を一つひとつ検証し、その当否を探っていく。
もう一つ、いま労働の現場でもっともよく聴かれる言葉が「人手不足」である。
とくに飲食や宿泊などのサービス業では、客を集める人気店でも人出が足りないために接客ができず、予約を断るケースもある。
また、介護や医療などの現場の人手不足も深刻で、外国人材の手を借りないと維持できないことがはっきりしている。
なのになぜ、賃金は上がらないのか。

第一線の労働経済学者として活躍する筆者は、物流や運送業界などの現場の声を聴き、その実態を見ることから、日本の賃金が上がらない本当の理由を明かす。
人手不足に悩む労働の現場では、いままで8人で担っていた仕事を7人で回し、同レベルの成果を出す「効率化」を進めてきた。
しかし、現場の労働者の献身的な努力や「カイゼン」によって「効率化」すること自体が、実は、日本の低賃金を固定化している可能性がある、と筆者は言う。
それはいったいどのようなメカニズムによって起こっているのか。
緻密なフィールドワークを基礎とする研究を重ね、日本の低賃金の謎に真正面から挑んだ、画期的な論考。

目次

第1章 「実質賃金の低下」をもたらしたものは
1 2022年以降に何が起きたか
2 欧米諸国の実質賃金
3 名目賃金はどこで上昇したのか
4 長期にわたる実質賃金の低迷
5 時間当たり実質賃金と労働時間
5‐1 長時間労働の是正
5‐2 短時間労働者の増加
5‐3 目標所得仮説
6 実質賃金低迷の構造
第2章 なぜ人手不足なのに賃金が上がらないのか
1 経済学の常識とのズレ
2 人手不足の業界ほど賃金が上がっていない
2‐1 制度的に価格が決まる分野
2‐2 過当競争と人手不足
3 賃金上昇と経済成長
第3章 実質賃金はどう決まるのか 
1 実質賃金とは
2 労働生産性――企業が払える賃金の土台
3 労働分配率――付加価値のうちどれだけを労働者に回すのか
4 交易条件――働いて稼いだ所得はどこへ消えていくのか
第4章 誰がコストを引き受けたのか 
1 循環から外れた交易条件
2 負担はどこにあらわれるか
3 日本の調整プロセス
3‐1 利益は圧縮されなかった
3‐2 価格は動かなかった
3‐3 負担は賃金に向かった
4 なぜ賃金が調整弁になったのか
第5章 なぜ価格は調整弁になれなかったのか
1 値上げすると取引喪失になる
2 価格が上がらない現実:運送業の事例
2‐1 「2024年問題」でも運賃改定できない
2‐2 価格交渉の限界
2‐3 経営者の努力不足で片づけられるのか
3 低価格・低賃金と長時間労働
4 全体最適の「全体」とは
5 低価格競争の帰結
5‐1 労働による吸収
5‐2 退出なき調整
第6章 賃金を価格に反映できない構造――労働組合の可能性と限界
1 労働組合と賃金相場
2 賃上げが抑制されたメカニズム
3 「失われた賃上げ分」を取り戻すことはできるか
4 賃金上昇が価格上昇につながりにくい労使関係
4‐1 賃金と価格の非対称性
4‐2 生産性向上の取り組み
4‐3 春闘の役割とその変容
第7章 賃上げを起点に考える
1 賃上げが先か生産性が先か
2 賃上げと雇用の関係
3 賃上げを起点と考える理由
4 最低賃金の引き上げは何を変えるのか
5 地域別最低賃金の限界
6 退出をどう受け止めるか
第8章 労働移動と賃金上昇
1 労働移動が賃金を押し上げるメカニズム
2 労働移動が進まない現実:ある事例から
3 労働移動の制約
4 転職の実態
5 労働移動を保障する仕組み
第9章 賃金と価格を結び直す
1 デフレは原因ではなく仕組み
2 現場力の転換
3 日本が目指した効率性
4 競争のあり方を問い直す
5 価格は何を回収しているのか
6 淘汰だけでは構造は変わらない
7 交渉が成立する条件
8 賃上げと負担の分かち方

著者プロフィール

首藤 若菜  (シュトウ ワカナ)  (

1973年東京都生まれ、立教大学経済学部教授。日本女子大学大学院人間生活学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。山形大学人文学部助教授、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス労使関係学部客員研究員、日本女子大学家政学部准教授などを経て現職。
専攻は労使関係論、女性労働論。
著書に『統合される男女の職場』(勁草書房、2003年=社会政策学会奨励賞、冲永賞受賞)『グローバル化のなかの労使関係――自動車産業の国際的再編への戦略』(ミネルヴァ書房、2017年=労働関係図書優秀賞、社会政策学会奨励賞受賞) 『物流危機は終わらない――暮らしを支える労働のゆくえ』(岩波新書、2018年)、『雇用か賃金か 日本の選択』(筑摩選書、2022年)、共著に『間違いだらけの日本の物流』(ウェッジ、2025年=住田物流奨励賞受賞)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。