君のドラマが見たいんだ!
先日、点けっ放しのTVから聞こえてきた某国国会のニュース。何故か、お公家さんの声がする。顔を上げると某野党幹事長が一生懸命に首相を紛糾する声であった。突っ込みを入れているはずなのに、頭の頂から出るような声のせいで「よきにはからえ」としか言っているように聞こえない。ああこの人が学校の先生だったら私、授業中寝てるな、と見れば、対する某国首相は三下ヤクザかもしくはスケさんカクさんに面した悪徳代官みたいな喋り方。この方、「お殿様、民衆がお殿様を嫌い始めています。」等と言われて「そーなの?じゃあ米一升ずつ、民衆みんなに配っといてよ。民なんて単純なもんよぉ、何か貰うもん貰っとけば、たちまち『お殿様大好き!』ってなるに決まってるんだからさ。」と以前、言ったらしく(そもそも殿ではないが)。もっと他に血税の使い道があるだろう。
そこに女性ながら父親譲りのだみ声が聞こえてきて、例え話が面白いのでつい聞いてしまう。やっぱり政治も女を口説くのも、喋りが上手くなくては駄目だな(勿論、身を伴った喋りでなければ女性は口説けない)と思いながら家を出て駅に向かえば、通り道にあるどこかの家の外壁は、政党のポスターだらけであった。お金のある(らしい)党のポスターは、サイズも大きくインクも良いのを使っているらしく発色が良く、如何にもお金の無い政党のはサイズも小さく印刷も悪い。時を経るにつれ、インクの良いのは凛然と色鮮やかなままだがインクの良くないほうはまさに色褪せてくるものだから、思わず悲哀を感じて応援したくなったりして。まさかこれが戦略だったりして。
しかし政党の広告写真、いくら数見てもイイ男は皆無に近いそして背景に、ドラマも感じられなければ声も聞こえてこない。写真はドラマを物語るからこそ、見てしまうのに(もしくはイイ男・イイ女だったら見てしまうのに)。
700枚を超える数にも関わらず、その一枚一枚の写真に見入ってしまうのが、『バンコク・バス物語』。奥床しいわたくしとしては、あまり自分の社の本を褒めるべきではないと思うのだが、だって面白いんだもん。著者は、もうバンコク中をバスで走りまわり、何でもカンでも撮っている。証明書用の写真とほぼ同サイズ、サイズ3cm×4cmの写真が映画のコマのごとくずらりと並び、撮って見せようと狙ったり、こんなの見つけたんだと誇示するようなおもねりが無いのが気持ちいい。それぞれの写真はまるで一枚の窓のように、ひとつひとつがその背景に広がるドラマや風景を思い起こさせ、時に声まで聞こえてくる。商店の軒先で卵と並んで売られている(?)猫、バスで夢想にふける僧侶、「だからナンナンダイ!」と突っ込みを入れたくなりながら、一枚一枚に付けられたキャプションをたどって写真を眺めるだけでも、本当に楽しい。本文がた、トツトツと語っているだけにクスクスと笑わせてくれる。タイの人と風景を見たまま語っているように見えが、実は裏づけされた知識と経験と。読んだ後には、自分までがバンコクをよく見知った、バンコクのバス体験者であるような気になってしまう。うん、これを片手にバンコクのバスを遊びに行こう。
実は発売日がタイ空港閉鎖と重なって、一時的に動きがフリーズしたものの、このところ勢いがついてきました。
さらに、そのタイの情勢をお知りになりたい方には『現代タイ動向』。タイ研究第一人者の方々による、これまでに無い、タイについての詳細な分析です。また、アジアのハブ空港と言われるタイの情勢から、世界を読み解くにもお勧めです。本当にタイは、面白い。